ZEBプランナーとは。申請の要件から事例まで解説
ZEBを意識した施工は、住宅業界でもよく耳にするキーワードの1つです。そして、ZEBを施工する事業者であれば、ZEBプランナーを取得しているケースも多いといえます。しかし、概要や要件も知らないというケースもあるでしょう。
本記事では、ZEBプランナーの概要や取得するメリット、事例についてみていきましょう。
目次
「トレンドワード:ZEBプランナー」
ZEBプランナーとは、「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」が承認するZEBロードマップや設計ガイドラインに基づいて設計を行う事業者が取得できる認証制度です。ZEBプランナーとなった場合、事業者は次のような役割を果たす必要があります。
- 相談窓口-建築主や施主などからのZEBに関する相談を受けられる。実際に相談窓口を設置する必要はないが、具体事例の解説・概要などの案内を含む
- プランニング支援-ZEBが関係する建築や設備設計、施工、コンサルティングといったプランニングができる体制が必要。たとえば、どの種類にするのか、どのような設備が必要で、どのぐらいのエネルギー削減が可能なのかなどを具体的に提案し、建物の詳細を決めていく
- プランニングによる取り組みの公表-プランニングで行った実績や今後の取り組みについて、自社ホームページなどで公表する必要がある。また、会社概要や必要書類への記載も必要。たとえば、受注実績や目標を公表する業務が発生する
ビルダーとプランナーを兼ねている場合でも、果たさなければならない役割は同様です。顧客からすれば、「ZEBの概要を把握したうえで、設備や設計まで考案できる事業者」としての役割が求められているといえます。
ZEBプランナーの目的は、「ZEBの普及と実現を目指す事業者を支援する」ことである点も知っておきましょう。
ZEBプランナーは2種類ある
ZEBプランナーの種類は、設計とコンサルティング等の2つです。どちらも取得できるものの、指定された年度の実績を報告することに加え、受注割合を公表する必要があります。たとえば、設計・コンサルティング業務で登録する場合、施工目標の50%以上をZEBとしなければなりません。
ZEBプランナーは設計事務所やコンサルティング会社、事業会社のどれであっても取得は可能です。しかし、業務内容を再整理したうえで、計画からこれまでの実績を明確に把握する必要がある点は知っておきましょう。
ZEBプランナーとなるための条件
ZEBプランナーとなるための条件は、概要でふれたもの以外は、次のようになります。
- ZEBプランナーに登録された事業者は、ZEBに関するプロジェクトの受注実績を毎年4月に経済産業省指定の機関に報告する。件数だけでなく、延べ面積も含める
- 経済産業省が実施するZEBの普及に関するアンケート調査などに協力する義務を果たす。たとえば、市場動向や技術的な課題なども含まれる
- 日本の正式な法人である
- 暴力団や反社会的勢力と関係がない。「暴力団排除に関する誓約事項」に反しない
- 過去に経済産業省が所管する補助金の交付停止や契約に係る指名停止措置を受けていない
業務内容として、相談も含むものの、報酬の有無は定義されていません。そのため、ZEBプランナーとして業務を遂行する場合、対価が発生することを前提に契約できます。
知っておきたいZEBの市場規模
ZEBプランナーが活躍するZEBの市場規模は、2030年には12兆300億円まで成長すると予想されています。カーボンニュートラルの実現だけでなく、ZEBやZEHなどの基準に合わせて事業者は建物を施工する必要があるため、対応できる事業者が増加しつつある状況です。
環境に関する規制は、今後より厳しくなる可能性もあるため、ZEBに対応できる技術力を企業として持つことが求められているといえるでしょう。
ZEBプランナーとなる3つのメリット
ここでは、ZEBプランナーを取得するメリットについて解説していきます。資源エネルギー庁が発表している「ZEB・ZEH-Mの普及促進に向けた 今後の検討の方向性について」では、BELSを取得したZEBの件数は5万件中198棟でした。
割合にすると0.40%であるものの、今後ZEBの割合は向上していくといえます。そのため、「ZEBのプランニングや施工が実施できることが企業の強みの1つ」として評価されるといえるでしょう。
市場内での競争力の強化
ZEBプランナー資格の取得によって、他社との差別化を図り、競争力を強化できるでしょう。たとえば、ZEB対応の設計やシミュレーションまで提案できるといった強みは、以下のようなメリットにつながるといえます。
- 顧客からの評価が高まる
- 公共建築物の入札で有利になる(企業の環境配慮の姿勢と実績が評価される)
- 実績数を公表するため、顧客からの評判がより集まりやすい
ZEBプランナーを取得していれば、市場における環境意識の高まりに対応していると評価できるため、ブランディングにも役立ちます。
新規ビジネスチャンスの創出
ZEBプランナー資格を持ったうえで、設計からシミュレーション、その後の保守・管理まで請け負えるようになれば、受注できる案件数の増加や売上の増加が見込めます。
また、建築主が補助金やインセンティブ制度を活用したプロジェクトに参画できます。そのため、リノベーションやリフォームなどの事業にも進出しやすくなるでしょう。
長期的な収益性の確保が予想される
ZEBプランナーとして活動することで、設計事務所は持続的な収益性を確保できる可能性が高まります。ZEBを提供できる事業者が限られていることに加え、環境意識の高いクライアントやコスト削減を重視する企業・自治体からの信頼を獲得しやすくなるためです。
また、ZEB対応の設計やコンサルティングにおいては、ZEBに対応できることが差別化や競争力のあるサービスにつながるため、長期的な収益性の確保につながります。ZEB市場が拡大していることから、ZEBプランナーは今後もニーズが高いといえるでしょう。
ZEBプランナーの事例
ZEBプランナーとして、ここではミニストップの事例についてみていきましょう。ミニストップでは、コンビニエンスストアとして展開する「ミニストップ」をZEB仕様で建築しています。再生可能エネルギーの活用や一次消費エネルギーの削減が実現されており、店舗によって6割以上のエネルギーを削減しています。
また、国産FSC®認証木材の使用やZEB100店舗一斉取得なども実施しています。今後もミニストップは環境に配慮した店舗作りを徹底していくといえるでしょう。
まとめ
ZEBプランナーは、ZEBを実現するための専門知識と技術を持つ設計事務所や企業が認定される制度です。ZEBプランナーは、省エネルギー設計や再生可能エネルギーの導入計画を立てたり、シミュレーションする業務を含みます。
ZEBプランナーになるには、一定の実績に加えて、形式に合わせた申請が必要です。また、毎年、ZEB受注実績や今後の計画を経済産業省に報告する義務があります。しかし、ZEBプランナーを取得することで、環境に配慮した企業として評価されたり、競争力の強化につながったりするため、取得を目指してみましょう。