ZEB認証とは。種類から取得プロセスまで解説
ZEB認証は、建物のエネルギー効率を高め、環境への負荷を最小限に抑えることを目的とした評価制度です。ZEB認証は大規模な建物に適用される制度であるものの、住宅業界の事業者として概要や評価項目は知っておく必要があるでしょう。
本記事では、ZEB認証の概要から種類、取得までの具体的なプロセスについて詳しく解説します。
目次
「トレンドワード:ZEB認証とは」
ZEB認証は、建物の年間エネルギー消費量をゼロに近づけることを目的とした認証制度です。再生可能エネルギーの活用や省エネルギー技術の導入によって、総エネルギー収支をゼロにする建物に対して、認証が行われます。
また、似た概念のZEHとの違いも知っておきましょう。ZEBは、公共施設や学校、庁舎やビルなどといった大規模な建物に適用される認証制度です。対して、ZEHは住宅に適用される認証制度だといえます。
資源エネルギー庁傘下の「ZEBロードマップ検討会」が2015年に発表した「ZEBロードマップ」では、2030年までに新築の公共建築物や大規模オフィスビルのZEB化を進めることが目標とされました。
そのため、各事業者は、ZEBを実現するための技術開発を進め、政府や自治体はZEB認証取得に向けた補助金制度を整備しています。
ZEB認証の種類
ZEB認証の種類について詳しくみていきましょう。
ZEB
ZEBは、年間一次エネルギー消費量を100%削減し、実質的にエネルギー消費がゼロとなる建物です。そのため、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入に加え、
建物の設計から運用にいたるまで、エネルギー効率を徹底的に追求する必要があります。
そのため、最新の省エネ技術や再生可能エネルギー技術が積極的に導入されている点も特徴です。
Nearly ZEB
Nearly ZEBは、建物の年間一次エネルギー消費量を大幅に削減し、75%以上のエネルギー削減を達成している建物です。エネルギー収支を完全にゼロにできないものの、省エネ技術と再生可能エネルギーの導入が必要とされているため、公共の建物や商業施設などでも導入が進んでいます。
ZEB Ready
ZEB Readyは、建物の年間一次エネルギー消費量を50%以上削減した建物です。この段階では、再生可能エネルギーの導入が必須でないものの、将来的にZEBを目指せる状態であることが求められます。
ZEB Readyに関しては、新築時やリノベーション時に、今後のZEB化に対応できるように設計された建物に適用されます。たとえば、太陽光発電の設置スペースを確保しておく、コントロールできるシステムをしておくなどといった準備が必要です。
ZEB Oriented
ZEB Orientedは、大規模建物や複雑な用途の建物を対象に、構造や設計、設備面から省エネルギー性能が高い建物に与えられる認証です。とくに、エネルギー消費の多い大規模な施設や様々な用途に対応する建物に適用されることが多い点が特徴といえます。
ZEB認証が注目を集める3つの理由
ここでは、ZEB認証が注目を集める3つの理由について解説します。
環境負荷の軽減に貢献できる
ZEB認証は、建物のエネルギー消費を大幅に削減し、再生可能エネルギーを導入することで、地球環境への負荷を軽減する取り組みです。断熱性能の向上や高効率な空調・照明設備の導入、太陽光発電などによって、建物のエネルギー消費が抑えられるため、温室効果ガスの排出量も削減されます。
2050年のカーボンニュートラルを実現するためにも必要な取り組みだといえるでしょう。
企業の社会的責任(CSR)の評価につながる
ZEB認証を取得できる建物を施工することは、環境に配慮した経営姿勢を示す有効な手段です。企業の社会的責任(CSR)が重視される中で、環境への配慮は企業の信頼性や評価に影響を与えます。
とくに、環境意識の高い消費者やビジネスパートナーからの支持を得ることができ、企業イメージの向上につながるでしょう。
経済的なメリットがある
ZEB認証を取得すれば、省エネルギー技術の導入や再生可能エネルギーの利用によって、従来よりも大幅にコストを抑えることができます。
また、ZEB認証を取得した建物は、長期的に見ても経済的価値が高まります。エネルギー効率が高い建物は、投資家や賃貸市場からの需要が増加する傾向にあり、結果として資産価値の向上が見込まれるためです。
加えて、ZEB認証を取得する企業には、政府や地方自治体からの補助金や税制優遇措置が受けられる場合があるため、経済的なメリットは多いといえるでしょう。
ZEB認証の評価項目と取得プロセス
ここでは、ZEBの評価項目や取得のプロセスについて解説していきます。
代表的な評価項目
ZEB認証の代表的な評価項目は以下のとおりです。
- 断熱性能: 建物の外皮(壁、屋根、窓など)の性能。断熱性能が高いほど、建物内の温度を安定させ、空調や暖房に必要なエネルギーを削減できる。
- 気密性能: 隙間風や外気の侵入を防ぐための気密性能。気密性が高ければ、冷暖房効率が向上し、エネルギー消費の削減につながる。
- 空調システム: ヒートポンプ式空調機や全熱交換型換気システムなど、エネルギー消費量を抑えつつ快適な室内環境を維持できる技術。
- 換気システム: 建物内の空気質を維持しつつ、換気に伴うエネルギー損失を最小限に抑えるシステム。室内の温度を保ちながら外気との換気を行うことで、エネルギー消費を抑える。
- 照明: エネルギー効率の高い照明。従来の照明器具に比べて大幅な電力消費削減が可能。照明の自動調光システムや人感センサーなども評価対象
- 太陽光発電: 建物の屋根や外壁に太陽光パネルを設置し、自家発電を行う。発電された電力は、建物内で消費される電力として利用され、余剰電力は売電できる。
- BEMS: 建物全体のエネルギー使用状況をリアルタイムで監視・管理するシステムが評価される。エネルギー使用量の無駄を削減し、効率的な運用が可能になる。
認証取得のプロセス
認証取得のプロセスは次のようになります。
- ZEBの基本設計と詳細設計を行う。
- ZEB認証。第三者機関による設計審査を受ける。この段階で、設計図書やエネルギー計算書を提出する。ZEB認証基準に適合しているかも確認される。
- 補助申請
- 施工・竣工・竣工検査。それぞれの進捗状況に合わせて、チェックされる。施工の中間審査、竣工後の完成検査、データとの照合などがある
- 実績報告書を提出する
新築や既設であっても流れは大きく変わりません。施工前に必ず検査が必要であり、施工する期間まで決まっているため、事業者として施工する場合は申請のノウハウも重要になります。
まとめ
ZEB認証は、建物の年間エネルギー消費量をゼロに近づけることを目的とした認証制度です。ZEB認証を取得すれば、再生可能エネルギーの導入や高効率設備の活用を促進でき、地球温暖化対策に貢献できます。
また、ZEB、Nearly ZEB、ZEB Readyといった種類があり、それぞれの基準に応じた取り組みが必要です。ZEB認証の取得プロセスにおいては、事前計画から設計・施工、完成後の検証まで、各段階で厳格な評価が行われます。今後、より基準が厳しくなっていく可能性もあるため注目しておきましょう。