ZEH基準とは。他基準と導入プロセスを解説
近年では、環境に配慮した家づくりにハウスメーカー各社が注力しています。その中で家づくりの基準としてZEHを意識している企業も多いといえるでしょう。
しかし、住宅の省エネルギー性能を評価する基準は、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)だけではありません。HEAT20やCASBEEなど、さまざまな基準が存在します。
本記事では、ZEH基準と他の主要な省エネルギー基準を徹底的に比較したうえで、施工のポイントなどについて詳しくみていきましょう。
「トレンドワード:ZEH基準」
ZEHとは、年間を通して、「高効率設備や太陽光発電などで生産されるエネルギー量(創エネ)で、消費されるエネルギー量を結果的にゼロにすることを目指す住宅」のことです。
- ZEH Oriented
- Nearly ZEH
- Nearly ZEH +
- ZEH
- ZEH +
- 次世代ZEH+
ZEHを導入する目的は、次のとおりです。
- 温室効果ガス削減:地球温暖化対策やカーボンニュートラルの実現を目指し、住宅からのCO2排出量を削減する
- エネルギーコスト削減:高断熱・高気密な住宅の提供により、冷暖房費を削減し、住まい手の経済負担を軽減する(日本のエネルギー事情も含む)
また、ZEHは断熱性能(UA値)と一次エネルギー消費量の削減率に対して基準が設けられています。そのため、以下の基準を達成しなければ、「ZEH」とは認められない点は知っておきましょう。
- 断熱性能は0.4から0.6W/㎡・K以下
- どの基準でも一次エネルギー消費量は最低20%以上削減(ZEHは一次エネルギー消費量を創エネ含めて100%以上削減)
- 再生可能エネルギーの導入・利用(ZEH Orientedでなければ必要と想定される)
- 次世代ZEH+はV2H(EV車から家庭に電力を分ける)設備、蓄電システム、燃料電池、太陽熱利用温水システムのどれかを導入する
とくに断熱性能に関して、どの基準に合わせるのかは顧客や地域によって異なるといえます。そのため、それぞれの地域の基準を知っておくことが大切です。
ZEHビルダーとZEHプランナーとは
ZEHビルダーとは、ZEH基準を満たす住宅の施工を行う建築会社や工務店を意味する言葉です。ZEHビルダーは、申請したうえで登録する必要があるこに加え、補助金の使用条件になっている点も知っておきましょう。
対して、ZEHプランナーは、ZEHの設計・施工に関する専門知識を持つ設計事務所を対象とする言葉です。ビルダーとプランナーをどちらも保有している企業も増加傾向にあります。
ZEHの基準を他の基準と比較
ここでは、ZEHの基準と他の基準を比較すると次のようになります。ZEHの基準値以上に厳しい基準もあることは知っておきましょう。
名称 | 断熱性能 | 一次消費エネルギー削減量 | 具体的要件 |
パッシブハウス(ドイツで開発された基準) | U値0.15W/㎡K以下 | 1年を通して120kWh/㎡以下となること | 熱回収率75%以上、50Paの圧力がかかった状態で換気回数0.6以下(気密性)。気密性はC値換算では0.2以下 |
LEED(アメリカのグリーンビルディング協会が設定した基準) | 具体的な数値設定はない。ただし、建物全体のエネルギー効率は評価される | ASHRAE90.1基準(アメリカ暖房冷凍空調学会が発行するエネルギー規格)に基づいて評価。 | 49ポイントまでは標準認証、50から59はシルバー、60から79はゴールド、80以上は110を最大としてプラチナという評価になる。 評価項目は9つほどあり、エネルギーと大気の項目では再生可能エネルギーや冷暖房設備を含む |
HEAT20(「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」が制定 | 地域によって異なるが0.2から0.56W/㎡Kまで。また、各地の規定された室内気温を下回らない(13℃から15℃を下回らない) | 削減率は、約20%から75%。 | 地域によって外皮性能と削減エネルギー立が大きく異なる。G1からG3グレードに分かれ、G3が最も断熱性能に優れる。 |
CASBEE戸建(一般社団法人日本サステナブル建築協会)が提供する環境性能評価ツール | 具体的な数値基準はなし。 | 評価がCからSに分かれているものの、最低10から25%以上は削減する必要があると考えられる。 | 空気や温熱、快適性などの環境品質(Q)と、エネルギーや資源などの環境負荷(L)で評価する。Qは数字が高いほど性能がよく、Lは数字が低いほど性能が高い。ランクはCからS |
建築物省エネ法 | 0.46から0.87W/㎡Kまで。 | 基本的に削減率は20%以上になるケースが多い。 法律の基準では設計一次消費エネルギー量が基準一次エネルギー量より小さければ良い。 | 設計段階でのシミュレーションが必須。また、判定を受ける評価され、申請するという手間が必要。 |
ZEHの導入プロセスと注意点
ZEHの導入プロセスは次のようになります。とくに、今からZEHの施工に取り組みたいという場合は参考になるでしょう。
- ZEHの基準や各種ガイドラインの確認
- 最新設備、必要な設計の研究や知識を蓄える
- ZEHの普及目標を策定しながら、自社の施工状況を把握する
- 設計に必要なツール・ソフトウェアを使用する
- 自社で施工するモデルハウスを作り、実験を繰り返す
- 自社商品の強みとなる技術や実績など見つけ出す
- 施行方法をマニュアル化し、顧客のニーズに答えながら普及目標の達成を目指す
注意点として、ZEHは施工する技術を保有していてもビルダーやプランナーとは名乗れず、補助金を使用できないという点は知っておきましょう。ビルダーやプランナーとなりたい場合には、関係各所に対して申請書類を用意し、普及目標などの経営戦略まで考えなければなりません。
まとめ
ZEHの基準は、断熱性能の確保と一次エネルギー消費量の削減を目指し、再生可能エネルギーの利用を推奨するものだといえるでしょう。ZEHの基準に沿った家づくりを実現できれば、エネルギーコスト削減に加え、環境負荷軽減や持続可能な住環境の構築が可能となります。
ただし、今後、ZEH以上に厳しい基準が作られていく可能性も否定できません。そのため、ZEHに対応した家づくりができる技術やノウハウを企業として蓄積していくことが大切だといえるでしょう。