ZEHマンションとは?メリットから企業としての考え方まで解説

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近年、国際社会では、持続可能な未来を実現するためにさまざまな環境規制を導入しています。温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーの導入促進、エネルギー効率の向上など、多岐にわたる取り組みが必須とされています。

そして、日本では、環境への配慮として、建築物に対してZEHやZEBといった新しい基準が設けられており、大企業においては普及率が6割を超えている状況にあります。では、ZEHとZEHマンションの基準は何が違うのでしょうか。

本記事では、ZEHマンションの概要やZEHとの具体的な違い、対応することによる企業的メリットについてみて解説していきます。

「トレンドワード:ZEH マンション」

ZEH-M(ゼッチ・マンション)は、マンションを対象とした省エネ基準を意味する言葉です。断熱性性能の向上を図ったうえで、一次エネルギー消費量を最低でも20%以上削減しなければなりません。

対して、ZEHは戸建て住宅に適用される省エネ基準を意味する言葉です。基準そのものはZEH-Mも大きく変化しません。ただし、ZEH-Mは住棟と各住戸での評価がある点と次のように階層ごとの基準がある点は知っておきましょう。

  • 1~3階層までは創エネ含め75%から100%減
  • 4~5階層までは創エネ含め50%減
  • 6階以上は創エネ基準なし

※断熱性能は0.4から0.60W/㎡K相当、再生可能エネルギー(創エネ)含んだエネルギー消費量を20%削減している前提

つまり、ZEH-Mでは、階層・住戸ごとの評価基準と建物の評価基準をどちらも満たさなければ、「ZEH-M」と認められないといえるでしょう。

知っておきたいZEHマンションの種類

ZEH-Mにおける住棟単位の基準は、次の4つになります。断熱性能は0.4から0.60W/㎡K相当、再生可能エネルギー(創エネ)含んだエネルギー消費量を20%削減という条件は、どの基準でも満たさなければなりません。

名称基準内容
ZEH-M容量不問の再生可能エネルギー導入創エネ含み100%以上の一次エネルギー消費量削減1から3階の建物
Nearly ZEH-M容量不問の再生可能エネルギー導入創エネ含み75%以上100%未満の一次エネルギー消費量削減1から3階の建物
ZEH-M Ready容量不問の再生可能エネルギー導入創エネ含み50%以上75%未満の一次エネルギー消費量削減4から5階の建物
ZEH-M Oriented容量不問の再生可能エネルギー導入6階以上の建物

ZEH-M Oriented以外は、再生可能エネルギーの導入が必須となります。ただし、設備を導入したとしても、太陽光発電システムで6階以上の建築物の消費エネルギーを全てまかなうことは難しいでしょう。

そのため、1から3階までの建物に求められる基準と6階以上の建築物の基準は大きく異なります。自社で施工する建築物がどの基準を適用しなければならないのかは知っておくことが大切です。

ZEHマンションのメリット

ここでは、ZEH-Mを自社で施工するメリットについてみていきましょう。カーボンニュートラルの実現に協力的な姿勢として捉えられる点や市場競争力の強化、社会的な信用の向上など、事業面としてもさまざまなメリットがあるといえます。

市場競争力が高まる

ZEH-Mは省エネ性能が高く、ランニングコストが低いため、購入者や賃借人からの評価が高まりやすいというメリットがあります。また、建物性能としても、他のマンションと差別化できるため、販売や賃貸における市場競争力の向上に期待できるでしょう。

また、環境意識の高い消費者からの需要の増加が見込めます。とくに、住環境の快適性が向上し、長期的な利用が期待できるようになる点は、企業・顧客どちらにもメリットだといえるでしょう。

補助金や税制優遇措置を活用できる

ZEHの普及を促進するために、政府や地方自治体から様々な補助金や税制優遇措置が提供されています。そのため、初期投資の一部をカバーできることから、事業者にとって経済的なメリットがあります。補助金を受けることでプロジェクトの収益性を高めることもできるでしょう。

ただし、建築技術があったとしても、補助金の活用はZEH・ZEBプランナー・ビルダーとして認可される必要もある点には注意が必要です。

環境面から会社としての社会的評価の向上が期待できる

環境に配慮した住宅を提供することで、企業の社会的責任(CSR)が高く評価されます。とくに、環境に配慮した取り組みは、企業ブランドの向上やステークホルダーからの信頼を得やすくなります。たとえば、投資家や顧客、地域社会からの評価向上は、将来的な企業評価にもプラスの影響を与えるでしょう。

また、世界ではEUのグリーンディールやアメリカのパワープランなども含めて、環境規制が厳しくなりつつあります。しかし、先進的な取り組みを行うことで、将来的な経営リスクを低減することにもつながります。

企業としてZEHマンションの施工に取り組む意味

ここからは、将来的な視点からZEHマンションを企業として、開発・施工する意味についてみていきましょう。企業として対策が必要となることに加え、今後より規制が厳しくなることが予想されます。そのため、規制に対応できる企業力をつけておくことが必須となるといえます。

エネルギーコスト低減をアピールできる

ZEH-Mは高効率の設備や断熱性能を持つため、居住者の光熱費削減が可能です。経済的負担が軽減されるため、長期的な住み心地の向上につながります。事業者にとっても、エネルギーコストの低減によって、マンション全体の運営コスト削減につながり、資産価値の維持向上につながる点はメリットです。

たとえば、断熱性能と一次消費エネルギーを基準以上に向上させた建築物を多数提供しているといった場合は、市場へのアピールにもつながるでしょう。

将来の規制対応が容易になる

環境規制やエネルギー効率に関する法律は、今後さらに厳しくなる可能性があります。日本に関しては、建築物省エネ基準法によって最低限の断熱性能と消費エネルギーの数値が規定されています。そのうえで、世界的な環境規制の影響からより最低限の基準は引き上げられる可能性があるといえるでしょう。

そのため、企業として、ZEH基準を満たすマンションを開発することで、将来的な規制強化に備えることが可能です。

たとえば、断熱性能の基準値だけを比較しても、省エネ法の場合は0.46から0.87W/㎡Kまで開きがあります。対して、ZEH-Mの基準が0.4から0.60W/㎡K相当とされているため、省エネ法の基準より厳しくなっています。

そのうえで、将来的な対策として0.4W/㎡K相当以上の性能を持つ建築物を建てられる技術開発を行っておくことは企業活動としてもプラスになるでしょう。

まとめ

ZEH-Mは、高エネルギー効率の実現や光熱費の削減が期待できるマンションです。政府や地方自治体からの補助金や税制優遇措置によって、初期投資を抑えつつ、環境負荷の低減も可能です。

また、企業の社会的評価を高め、市場競争力を向上させる効果も期待されます。ZEH-Mの導入は、事業者にとって多くのメリットがあることから、今後の経営における重要な戦略の1つだといえるでしょう。