2024年6月における3つのZEB補助金を解説

掲載日:
Category:

2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、住宅・建築業界でもエネルギー消費を考慮した建築物作りが求められるようになりました。しかし、新築だけでなく、既存の建築物に対して、省エネ・創エネの仕組みを導入するには、ある程度のコストが掛かります。

また、ZEBに関しては、官公庁が返済の必要がない補助金による支援を行っている状況です。そこで、本記事では、各官公庁のZEBに関する補助金についてみていきましょう。

「トレンドワード:ZEB 補助金」

https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html

ZEBは、システムや設備による徹底した省エネと創エネで、年間のエネルギー収支をゼロにする建物を意味します。「エネルギー消費量をどのくらい削減しているか」によって、次のように4つの種類に分かれ、最低でも30%以上のエネルギー消費量がカットされている点は知っておきましょう。

  • ZEB-省エネ(50%)+創エネで、100%以上の一次エネルギー消費量をカットしている
  • Nearly ZEB-省エネ(50%)+創エネ25%で75%の一次エネルギー消費量をカットしている
  • ZEB Ready-省エネ(50%)で創エネはなし。
  • ZEB Oriented-延べ面積10,000平米の場合に使用される定義。建物の種類によって、30%~40%以上といった規定がある

ZEBに関しては新築・既存どちらも導入するまでに、1年から2年ほどの時間を要することに加え、設備投資のためのコストが発生します。設計段階からZEBを前提とするケースや既存の建築物でも大規模な改修が必要となるため、官公庁の補助金を活用するケースが多いといえます。

では、次項からは各省庁の補助金の内容についてみていきましょう。

建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業:環境省

建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業は、2050年のカーボンニュートラルと2030年の一次消費エネルギー46%カットを目指すための補助金制度です。既存・新築のZEB化を推進するための設備導入や改修、災害拠点としての活用など、目的に合わせて多方面から支援を行います。

ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業

既存・新築の建物に対して、ZEBの普及促進を促すための取り組みを幅広く支援する補助金です。たとえば、ZEB化するための設備導入やZEB化を前提とした調査などは、事業内容に該当するでしょう。要件は、次のような項目が代表的です。

  • 区分ごとのエネルギーの計量・計測を行い、データを収集、分析・評価できる管理体制を構築する
  • 需要者側設備から通信・制御できる機器を導入する

補助率は既存と新築で大きく異なります。また、上限金額は3億から5億円となっているものの、延べ面積が新築では10,000平米以上、既存の場合は2,000平米以上は対象外などの細かい注意点もあります。


延べ面積
補助率
既存新築
2,000平米未満ZEB 2/3Nearly ZEB 2/3ZEB 1/2Nearly ZEB 1/3
2,000平米以上~10,000平米未満ZEB 2/3Nearly ZEB 2/3ZEB Ready 2/3ZEB 1/2Nearly ZEB 1/3ZEB Ready 1/4
10,000平米以上ZEB 2/3Nearly ZEB 2/3ZEB Ready 2/3ZEB Oriented 2/3ZEB 1/2Nearly ZEB 1/3ZEB Ready 1/4ZEB Oriented 1/4

※対象外は記載なし

LCCO2削減型の先導的な新築ZEB支援事業

LCCO2削減型の先導的な新築ZEB支援事業は、ライフサイクルを通じた脱炭素を目指す建物支援と建物の付加価値向上による暮らしやすさへの貢献を目的とした補助金です。

代表的な要件はZEB Ready基準以上を満たしたうえで、エネルギー管理の体制構築・整備も実施しなければなりません。また、再エネ導入・未評価技術の導入等も評価項目となります。

補助率は1/3から5/3となっており、金額に関しては上限は5億円です。

国立公園利用施設の脱炭素化推進事業

ゼロカーボンパークとして登録された国立公園内施設の改修を実施する場合に活用できる補助金です。CO2削減と登録拡大が目的となります。

再エネ設備や省エネ設備に加え、EV充電機器なども対象となる点も特徴です。また、インバウンド対応やホームページでの周知も必要要件となっています。補助率は最大で1/2、上限は7,500万円です。

ZEB実証事業:経済産業省

民間の大規模建築物に関して、ZEBの導入を図ると共に情報提供を前提として、ZEB化の費用を支援するといった内容の補助金です。建築物の延べ面積は新築10,000平米以上、既存2,000平米未満と決まっており、補助率2/3、金額上限は5億円となっています。

実証事業となっていることから、次のような条件を満たす必要もあります。

  • 事業完了後の実施状況の内容を開示・公表する
  • ZEBした場合とZEBしなかった場合のコストの内訳や差額を算出・提出しなければならない

また、エネルギー消費性能計算プログラムで未評価技術とされているCO2濃度による外気量制御や自然換気システムの導入なども導入を検討しなければなりません。

サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型):国土交通省

省エネ・CO2削減に貢献する住宅や建築物に対して、支援するための補助金です。非住宅の建築物から、共同・戸建て住宅まで対象範囲に含めます。

要件には、ZEB・ZEH水準の断熱性能や省エネルギー性能を満たしたうえで、低層共同住宅ではライフサイクルCO2の評価結果が0以下となるといったものがあります。建築物と一般的な住宅を比較すると次のような違いがある点は知っておきましょう。

  • 補助率は1/2で変動しない
  • 戸建て住宅は上限は200万円、非住宅は場合によって3億円(1プロジェクト単位)
  • 低層共同住宅部門は1戸75万円、1プロジェクト単位では1億円

まとめ

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、ZEBを導入する動きが加速しています。省エネと創エネは建築物の評価にもつながる項目となりつつあるといえるでしょう。

そして、各官公庁では補助金を提供しており、申し込む補助金によって補助率や上限金額、要件が大きく変化します。そのため、補助金の内容をふまえ、自社の事業内容に合わせたZEBの導入を検討してみましょう。