3Dプリンティングが住宅業界に与える影響とは?今後の可能性を解説
近年、3Dプリンターの活用事例は世界中で増加しつつあります。技術として出力できる環境が整った点やコスト面からニーズが高まっている点などもふまえて、今後は住宅業界にも影響を与える可能性があります。
しかし、実際に3Dプリンターの技術にはどういったものがあり、どのように活用すればよいのか分からないというケースもあるでしょう。
本記事では、3Dプリンターの出力技術の総称である3Dプリンティングの概要と今後3Dプリンターが住宅業界に広がっていくかという予想について解説します。
目次
「トレンドワード:3Dプリンティング」
3Dプリンティングは、3Dプリンターにおける製造技術の総称を意味します。技術の総称であるため、特定の材料や3Dプリンターの造形形式とは意味が異なる点は知っておきましょう。金属やセラミック、プラスチックなど様々な材料を扱える点も特徴だといえるでしょう。
たとえば、次のようなメリットは、全て3Dプリンティングによってもたらされるものです。
- 複雑な形状であってもプロトタイプの作成ができる
- 既存商品の性能を底上げができる
- 自由なデザインの金属鋳造ができる(工具や加工品も含め)
日本では、事例が少ないものの、海外においては3Dプリンターによる住宅の建設は増加しつつあります。
3Dプリンティングに関連する3つの造形方式
ここでは、3Dプリンティングが活用される3Dプリンターの造形方式についてみていきましょう。住宅に使用される3Dプリンティングに関しては、モルタルを使用し、積層を作りながら立体物を作るため、FDM形式のものが多い状況です。
粉末焼結積層造形方式
粉末焼結積層造形方式(SLS)は、レーザー光線によって、ナイロンやニッケルといった粉末状の材料に照射することで物質を結合(焼結)させます。複雑なモデルの造形に使用され、とくに金属製の工業製品の製造、医療用インプラントに活用可能です。
光造形方式
光造形方式(SLA)では、液体樹脂に紫外線を当てて立体物を作成します。材料の変質・後加工がしやすい点がメリットといえるでしょう。大型の立体物を作成しやすく自動車のモックアップなどにも使用されています。
熱溶解積層方式
熱溶解積層方式(FDM)は、溶解した樹脂を積層し立体物を作成します。材料を押し出すMEXもFDM方式に該当する方式です。
安全性が高く、様々な材料を混合して使用できる点がメリットです。サイズの小さいモックアップに使用されるケースが多く、3Dプリンターの価格も安価な点が特徴だといえるでしょう。
住宅業界における3Dプリンティングのメリット
ここでは、住宅業界における3Dプリンティングのメリットについて、みていきましょう。現状では、建築基準法に対応した3Dプリンターは世の中に普及しておらず、大手住宅メーカーでも研究が進んでいるとは言い難い状況です。
しかし、複雑なデザインを含むアイデアの実現や品質の向上など、3Dプリンターを使用することで実現できるメリットも多くあるといえます。
工期の短縮ができる
3Dプリンティングの活用によって、これまでの工期やコストを大きく削減可能です。顧客視点では、ローンの短期化やデザインアイディアの実現がしやすくなります。
また、住宅メーカーとしても、次のようなメリットが発生するため、より効率的な工事につながるでしょう。
- 最適な人員配置が可能となる
- スケジュール把握が容易になる
- 発生する資材・人材コストが最小となる
これまで工場で作っていたパーツを現場単位で作成することもできます。そのため、企業によっては大幅なコストカットも可能だといえます。
省人化の促進ができる
省人化は、住宅業界においても課題の1つです。しかし、3Dプリンティング技術を活用することで次のように省人化を促進できます。
- 住宅作りにおいて人が行う作業が少なくなる
- 工事に必要な人数が少なくなる
とくに、連携している工事会社や工務店との調整などもこれまで以上にスムーズとなる点はメリットといえるでしょう。たとえば、デザイン性が高い住宅だったとしても3Dプリンターであれば、データに従って出力するため、問題なく立体物を完成させられます。
廃棄物が少なくなる
使用する材料がそもそも少なくなるため、廃棄物の量を軽減できます。たとえば、工事現場では、木材や金属などの様々な材料を加工するケースも少なくありません。しかし、3Dプリンターを使用した場合、必要な材料は最初から揃っており、大幅な加工を実施する必要がないといえます。
住宅業界における3Dプリンター普及の可能性はある?
住宅業界において、3Dプリンターが普及するかどうかの予想についてみていきましょう。
普及すると思われる理由
普及すると思われる理由は、以下のようなメリットがあるためです。
- 建設・人材コストが安価となる
- 価格変動の影響を受けにくい
- 顧客のニーズに合わせやすい
住宅業界の今後の課題は、市場の減少と人材不足です。顧客の住宅ニーズが変化する可能性もあるため、3Dプリンターを活用する視点を持つことでより対応しやすくなるでしょう。
普及しないと思われる理由
3Dプリンターが普及しないと予想する理由は、建築基準法に対応できる事業者やスキルを持つ人材が限られるためです。たとえば、大手ゼネコンでは、既に構造体として認められる3Dプリンターを使用した構法を開発しています。
しかし、業界としては、統一された規格がなく、規格ができたとしても合わせるための技術力を持つ人材や企業が限られている状況です。そのため、業界全体で3Dプリンターやプリンティングを取り入れる施策や国として導入支援を行うなどの対策が必要だといえるでしょう。
まとめ
3Dプリンティングは、3Dプリンターの出力技術の総称です。SLSやFDMなど、様々な形式の出力方法があり、効率的に使用できる材料も異なります。住宅業界においては、建築基準法を満たす構造体を3Dプリンターで作成する技術が浸透していません。
そのため、現在では3Dプリンティングや3Dプリンターについては、業界で知っておかなければならない要素とは言い難い状況にあります。しかし、ニーズの変化に加え、技術の進化、規格の統一などによって、3Dプリンターを使用した住宅作りが浸透する可能性もあります。
そのため、3Dプリンターと出力技術である3Dプリンティングの話題については今後も注目していきましょう。