住宅業界でも必須。ハイパーパーソナライゼーションの活用が今後の命運を分ける?

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パーソナライゼーションは、顧客に合ったサービスや商品を蓄積されたデータから提案する技術を意味します。たとえば、顧客データを活用したメールやECサイトでのレコメンド部分では使用されるケースも増加してきました。

しかし、「似たような言葉であるハイパーパーソナライゼーションについては全く知らない」というケースもあるでしょう。

今回は、ハイパーパーソナライゼーションの概要やパーソナライゼーションとの違いにふれたうえで住宅業界でも重要になっていく理由について解説していきます。

「トレンドワード:ハイパーパーソナライゼーション」

ハイパーパーソナライゼーションとは、顧客の行動や趣味・趣向を情報として捉え、AIによる学習・分析を通して顧客体験を最適化する技術を意味します。たとえば、自社に興味を持ってくれた顧客にメールを送るとしましょう。

ハイパーパーソナライゼーションを活用することで、顧客の属性や趣味・趣向まで把握したうえでアプローチできるため、より適格なサービスや商品案内が可能となります。ポイントは、属性による顧客のカテゴライズを前提としたうえで、自社のコンテンツまで含めた提案がしやすくなる点です。

そのため、次のようなニーズに沿わない提案やマーケ施策を実施しにくくなるといえるでしょう。

  • 名前だけ異なる一斉送信メールの送付
  • 家族がいる顧客に「一人暮らし」を対象としたサービスや商品を提案する
  • 購入確度の低い顧客にアプローチし続ける

顧客の満足度向上だけでなく、住宅メーカーにとってもメリットの多い技術だといえるでしょう。

パーソナライゼーションにおける3つの視点

パーソナライゼーションにおける3つの視点は次のようになります。

  1. 顧客の属性(デモグラフィック)

ユーザーの性別、年齢層、趣向などの情報。そもそも属性が一致している部分があるため、顧客との関連性が高い。そのため、ある程度の反応は見込める。データを集める方法は、アンケートやSNS連携などが代表的。たとえば、メールにGoogleフォームで作ったアンケートのURLを送付する方法もある

  1. ユーザー独自の情報(コンテキスト)

アプリやサービスを使用する時間帯、デバイスの種類、サイト情報などの情報。たとえば、よくアプリを使用する時間帯に、その地域で開催する情報をプッシュ通知で知らせるといった使い方が可能。住宅業界では、展示会や展示場の見学・イベントの告知に使用できる

  1. 行動履歴

ユーザーの行動を学習させた上で適切なサービスや商品を案内するときに有効。たとえば、何度も特定の住宅サービスを見ているユーザーに対して、アプリで体験会を案内するといった使い方ができる。

住宅業界においては、大手企業であってもパーソナライゼーションを十分に活用できていないケースも少なくありません。しかし、小売やECを展開する企業ではすでに有効活用しており、顧客のニーズの変化に対応するためにも必要な対応だといえるでしょう。

住宅業界でも求めていたものを得られる体験が必須

住宅業界においても、次のようにAIを駆使したサービスや商品は増加しつつあります。

  • スマートホームに関連するIoT機器をまとめて操作できるアプリ
  • センサーで顧客の身体の異常を知らせる機器
  • 登録した人しかドアの開錠をできなくするスマートロック
  • 住宅で作られるエネルギーを管理・調節するシステム
  • 緊急通報と連携しているカメラ

現状では、顧客が望んだサービスを幅広く案内できる環境はありません。しかし、将来的にデータや製品規格の統一や企業各社との連携が可能になれば、より利便性の高いサービスを顧客に提供できるようになると予想されます。

また、新規住宅の施工数はいずれ減少していく見込みです。そのため、住宅業界においてもハイパーパーソナライゼーションを前提とした、新しい顧客体験を提供していく必要があるといえるでしょう。

住宅業界で進むと想定されるハイパーパーソナライゼーション

ここでは、住宅業界で進むと想定されるハイパーパーソナライゼーションについてみていきましょう。ニーズに沿った顧客体験の提供によって、自社の成長だけでなく、顧客からの社会的信用力やロイヤリティの向上も期待できます。

適正な住宅ローンの提案

顧客の行動や指向をリアルタイムで収集し、更新していくため、資金計画からローンの契約・審査にいたるまで適切なサービスや商品を案内することが可能です。たとえば、顧客に提案する場合に、顧客のライフスタイルや将来の展望、今までの行動履歴などを参照すればニーズに合わせた提案ができるといえるでしょう。

また、顧客にデータ入力を求めるのではなく、これまでの施策によって集まったデータの分析・解析済みデータを住宅メーカーが持てる点もメリットの1つです。

企業イメージの向上

ハイパーパーソナライゼーションによって、顧客に合わせた商品やサービスを必要なタイミングで提案できるため、顧客のストレス軽減につながります。また、スムーズなコミュニケーションがしやすくなるため、toB・toCどちら向けの企業であってもこれまで以上の顧客体験の提供が可能です。

そして、必要のないタイミングでの営業を避けられる、より顧客を絞ったマーケティング施策の実施ができることから、企業イメージの向上につながるでしょう。

ライフスタイルに合わせた商品やサービスの提案

住宅に関連するサービスや商品に対して、顧客視点では「必要なタイミングで必要なものだけを提案してほしい」というニーズは高いといえます。これは、データを活用せず、勘や経験に頼った販売手法が多かったためです。

しかし、ハイパーパーソナライゼーションを活用する場合は、顧客のライフスタイルに合わせた幅広い提案が可能となります。そのため、販売率の向上や自社の新しい商品やサービスの開発にもつながります。

まとめ

ハイパーパーソナライゼーションとは、顧客の行動や趣味・趣向を情報として捉え、AIによる学習・分析を通して顧客体験を最適化する技術を意味します。住宅業界では、まだ活用事例は少ないものの、既に活用できる技術はあるという状況です。

また、AIカメラやIoT機器など、ハイパーパーソナライゼーションを活用することで浸透させられる商品やサービスも多いといえます。そのため、住宅業界が今後どのような方法で顧客体験を提供していくのか注目しておきましょう。