2024年4月。住宅業界のDXの現状と活用事例を解説

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DXはバズワードとして、近年様々な業界で浸透しており、実際に多くの企業で取り組みがスタートしています。また、DXを前提としてGXやSXといった新しい考え方も定着し始めている状況にあります。

とくに、住宅業界におけるZEH基準や建築物省エネ法は、GXに関連したものであるため、業界としても注目度が高いといえるでしょう。しかし、自社でDX施策に取り組んでいても、「他社の施策はあまり知らない」というケースもあるでしょう。

本記事では、2024年4月段階の住宅DXの現状と活用事例について解説していきます。

「トレンドワード:住宅DX 現状」

今回は、住宅業界におけるDXの現状を取り上げます。iYell株式会社が「住宅業界のDX推進状況調査」として、住宅サービス・住宅テック会社7社と住宅業界従事者500人を対象に行ったアンケートでは、「DX を推進すべき」という回答が98.6%を占めました。つまり、住宅業界においてもDXを意識した取り組みを実施・予定している企業が多くなったと判断できます。

また、実際にChatGPTや業務改善ツール・システムを導入し、社内の課題にアプローチしているというケースも増加しつつあると判断できるでしょう。

DXを気にする人々が増加した理由は次のような項目が挙げられます。

  • DXの考え方・メリットが多くの業界に浸透する
  • 住宅業界でも働き方や業務フローの変革、顧客のニーズの分析などに使用できる事例が増加する
  • DXを前提としたGXに取り組まなければならない状況になりつつある

ただし、予算がかけられない、人材がいないといった理由でDXに取り組めていないという回答も35.8%ほどありました。

DXの注目度は高く取り組みに前向きな企業が多い

DX が求められる理由は、企業によって異なるものの、業務効率化や集客、人材不足の解消といった課題の解決に直接アプローチできるためです。実際に、取り組んで業務効率化やリソースの確保、負荷の軽減といった効果を出している事例も多くなってきました。 

そのため、今後も住宅業界ではDXによる業務改革や集客の効率化などといった取り組みが増加し続けると予想されます。また、同業他社の事例が増えるほど、「業界として取り組まなければならない意識が高まる」ため、業界全体に良い影響を与えると予想されます。

企業規模によって年間予算の差が大きい

住宅業界でも従業員数によって、年間予算に差がある状況です。しかし、DXに関してはできる範囲から取り組んでいくことが大切だといえます。

たとえば、予算不足に関しては、助成金 や 補助金などで補うことも可能です。また、他事業の予算なども見直すことでDXに注力できる余力が生まれるケースもあるでしょう。

人材不足に関しても、社内での教育体制を見直す、外部の人材育成サービスを利用する、ノウハウを持った外部の企業に協力を依頼するといった方法が考えられます。仮に、予算や人材不足が原因でDX推進ができていない状況であれば、詳細な現状把握 からスタートしましょう。 

住宅業界のDXを推進する5つの理由

住宅業界でDXを推進する理由は、以下の5つの項目が代表的です。たとえば、ペーパーレスは業務効率化の1つであり、書類管理や契約業務、申請フローを変える必要はあるものの、従業員の業務負担を軽減できます。 

  • 人材不足の解消
  • マンパワーに頼る業務の負荷軽減
  • 施工、接客の生産性向上
  • 顧客ニーズを詳細な把握
  • 労働環境の改善

DXの推進を検討する場合、自社の課題や現状を把握する必要があります。そのうえで、具体的な方法を検討し、従業員の理解を進める所からスタートしましょう。具体的な方法は以下のとおりです。とくに、属人性が高い、労働環境が悪く負荷が高いといった場合にはDXの推進によって解決できる課題は多いといえるでしょう。

  • データ共有や自動化ツールの活用(労働時間の減少と生産性の向上)
  • 人材不足で悩んでいる場合はAIロボットに任せられる部分は任せる(施工分野の生産性の向上)
  • これまでのノウハウや情報をまとめ新人に共有する(人材育成)

住宅業界における各社のDXの取り組み

ここでは、住宅業界における各社のDX の取り組みについてみていきましょう。 

積水ハウス

積水ハウスでは、自動的な窓・玄関の開閉、エアコンの操作ができるスマートホームサービス「PLATFORM HOUSE touch」や在宅時急性疾患早期対応ネットワーク「HED-Net」などを自社の仕組みとして活用しています。

また、シャーメゾンの入居手続きにおいては、全ての契約を電子化し、ブロックチェーンによる企業間連携などもふくめて契約をネットワーク上で完結させることが可能です。

ミサワホーム

ミサワホームでは、AIによる画像診断システムや一部物件のスマートロック導入などを取り入れています。とくに、AI による画像診断システムに関しては、建物の劣化をスマホで診断することができ、経験が浅くても顧客に対して診断結果を出すことが可能です。

また、次のようなシステムを採用し、ZEH・LCCM対応住宅にも注力しています。

  • 自宅の蓄電池や太陽光発電料をコントロールするIoTシステム「LinkGates」
  • 効率的な空調システムである「コモンズエア」

GXにも取り組んでいる企業の1つだといえるでしょう。

セキスイハイム

セキスイハイムでは、建材に関して、工場のオートメーション化を2030年まで95%に引き上げることを検討しています。生産性の向上と省人化につながるだけでなく、人材のリソースを他の創造性が必要な部署や工程に使用できます。そのため、企業としての競争力も高められるでしょう。

また、生産工程においては、判別や記録もAIで行うように変化しました。品質管理がしやすくなり、従業員の負担が軽減される点はメリットの1つといえます。

まとめ

住宅業界におけるDXの現状についてみてきました。「活用すべき」と思っている人々が多く、既に取り組んでいる企業も増加しているという状況にあります。

今後、住宅業界に関しては、新規住宅の供給が飽和状態となることも想定されます。DXの推進によって、生産性や人的リソースを確保し、企業として行き残っていくための方法を模索しましょう。