ロボットフレンドリーは住宅業界に広がるか?活用事例を解説
日本では労働力不足が進んでいることから、ロボットが様々な業界で活用されています。ロボットを利用できる範囲は清掃や運搬といったシンプルな作業が多いものの、将来的にはさらに多くの場面でロボットを活用していくことが予想されています。
住宅の中でも、特にマンションに関しては、付加価値の1つとしてロボットフレンドリーが注目を集めている状況です。本記事では、住宅におけるロボットフレンドリーについて解説していきます。
目次
トレンドワード:ロボットフレンドリー
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/230929_robotfriendly.html
ロボットフレンドリーとは、ロボットを導入しやすい環境を意味する言葉です。経済産業省においては、ロボットフレンドリーを次のように示しています。
「ロボットフレンドリーな環境の実現とは、ロボット導入にあたって、ユーザー側の業務プロセスや施設環境をロボット導入しやすい環境へと変革することを指します。」
住宅業界も含めて、日本の人手不足は加速しつつある状況です。しかし、ロボットを導入することによって、あらゆるサービスの品質向上や人間が行っていた作業の代替が可能です。たとえば、集合住宅における設備管理や荷物配送管理などは、実証実験が既にスタートしており、利便性の向上やセキュリティの担保につながります。
そのため、ロボットフレンドリーな環境を住宅業界でも今後より整え、ロボットを活用していく必要があるといえるでしょう。
ロボットフレンドリーが住宅業界で求められる理由
ここでは、ロボットフレンドリーが住宅業界で求められる理由についてみていきましょう。とくに、従来は人力に頼っていた管理や運搬といった業務を代替できる点や決められた内容を確実に実施できる点は、住む人々だけでなく、事業者にもメリットといえます。
住宅の施工に関しては、既にロボットによる作業の代替はスタートしているため、業界としては今後より活用していく流れが予想されます。
管理者や住む人々の負担を軽減できる
住宅内でロボットを活用できる区分は次のように分けられます。
- 警備ー建物の外周や共用部を巡回する
- 清掃ー警備フロア内の承認を可能として建物内の清掃を行う
- 搬送ーマンションであれば専有部の入口などで受け取り、配達者に届ける
- 案内ー建物の入口に設置しアテンドする。また、必要に応じて訪問先の受付を対応できるため、セキュリティも向上させられる
戸建ての場合では、掃除や警備では、ロボットを活用できるため、人力に頼るケースを減少させられるでしょう。たとえば、荷物の受け取りやスマートフォンからロボットに指示を出せば清掃が自動で開始されるという仕組みも開発されつつあります。
マンションでは公共の空間と共用部、専有部といったように各領域が細かく分かれていることに合わせて、ロボットの活動範囲や権限も細かく設定可能です。そのため、セキュリティを担保したうえで人間に掛かる負担を軽減できます。
今後人口・労働力が減少していくと予想されている
日本の人口の減少は止まらないと予想されています。そのため、住宅を建設する・住むといった場合もロボットを活用するケースは増加していくでしょう。
住宅の建設に関しては、既にAI・ロボットを活用して無人化の実証実験を開始している企業もあり、業界内にノウハウが広がれば、多くの企業がロボットを活用することが予想されます。
人口・労働力の減少は避けられない未来です。そのため、ロボットを活用できる部分と人間にしかできない部分を把握し、活用できるところから導入していく姿勢が大切になります。
非対面・非接触型のサービスにニーズがある
ロボットによる配達物の受け取りが可能になることで、非対面・非接触型のサービスが実現可能です。セキュリティ対策ができるだけでなく、それぞれのライフスタイルに合わせて荷物の受け取りが可能となるため、無理な時間の調整が必要なくなります。
人間が介在するサービスであれば、人為的な配達ミス・トラブルなどのリスクも考えられるものの、間をロボットが取り持つことで次のようなメリットも生まれるでしょう。
- 配達会社の業務時間の削減
- 管理者の確認業務の効率化
認証の方法などには課題があるものの、顧客のニーズとして、ロボットフレンドリーが求められているといえます。
住宅におけるロボットフレンドリーの事例
ここでは住宅におけるロボットフレンドリーの事例について、みていきましょう。
集合住宅における搬送
ソフトバンクロボティクス・日鉄興和不動産・日建設計・日建ハウジングシステムが協力し、2024年1月から2024年3月まで、大規模な住宅における荷物の搬送の実証実験が行われます。
実験の内容は、建物の入り口から住戸までロボットが荷物を運ぶというものであり、ルート設計や連携の方法、エレベータでの移動なども含めて、様々な検証を行う予定です。また、費用対効果という面では、割高になりがちなロボットを日常生活に取り入れていくための実装モデルの構築も目的となっています。
建物内の扉との連動(セキュリティ)
戸田建設とALSOKが連携し、セキュリティ扉とロボットの連携に関する実証実験を行いました。セキュリティが厳重なエリアに対して、ロボットにはこれまで次のような制限があったことから、共存に課題があったといえます。
- ロボットがセキュリティを解除する仕組みを持たない
- 標準規格がないため各社対応となりコストが高くなる
- 2台が同一の扉を利用した場合識別が難しい
この実験では共通のインターフェースやWi-Fiによる環境整備によって、屋外からセキュリティが厳重なエリアへの移動を既設のエレベーターで成功させています。また、エレベーターとの連動にも成功していることから、一定の成果を挙げたと判断可能です。
まとめ
ロボットフレンドリーは、ロボットを導入しやすい環境を作ることを意味します。そのため、住宅に取り入れる場合は、人間と違った動線や幅を考慮しつつ、設計の段階から検討していく必要もあるでしょう。
また、既存の建物に導入する場合には、ロボットが通れるかどうかを検討し、人間とすれ違う際のアラーム音の発信設定や住人がロボットとぶつからないための案内を廊下に設置するといった手間も発生します。
ただし、マンションの新しい付加価値の1つとして、ロボットによる配送・受け渡しはメリットがあるといえます。そのため、住宅業界におけるロボットフレンドリーについて今後も注目していきましょう。