空中配送は住宅業界に広がるか?メリットとこれまでの課題について解説
建設業界において、ドローンを活用した設計や施工計画を行うケースは珍しいものではなくなりました。住宅においても物件の撮影や外観の調査だけでなく、交通渋滞や再配達などの物流における課題を解決できる手段として、注目が集まっています。
しかし、ドローンを使用する場合は現在の航空法に則って運用する必要があり、規制されている地域も少なくありません。そのうえで、ワイヤーを使用した空中配送システムの利用が検討されています。
本記事では、空中配送が住宅業界に与える影響と事例についてみていきましょう。
目次
「トレンドワード:空中配送」
空中配送とは、ドローンを使用したものと、ワイヤーを使用して移動する配送ロボットを使用した配送方法を意味する言葉です。空中配送を利用する目的は次のようなものが代表的です。
- 物流機能を維持するためにも人的・金銭的コストを無くす
- 荷物を配送する側と受け取る側の負担を軽減する
- 荷物に対する心身的負担を軽減し持続可能な地域社会に貢献する
企業単位ではなく、地域と協力する必要があるものの、社会課題の解決の一つとして空中配送は有効な手段の1つだといえるでしょう。また、アプリで注文を行い、配達まで実施するため、労力に頼った配送が不要となります。
これまでの配送と住宅事情の課題
住宅業界においても、配送に関する課題は住みやすさに直結するため、検討しなければならないものです。ここでは、これまでの配送の課題と住宅に住む人々の課題について解説していきます。
住宅を提供する事業者として、空中配送やドローンといった新しい配送方法が注目を浴びている理由を知っておくことで生活に寄り添った提案がしやすくなるでしょう。
配送における課題
これまでの配送における課題は次のような項目が代表的です。
- 慢性的な人手不足が解消されない
- ECサイトの利用増加に伴い、配送コストが高くなり続けている
- 配達管理のコストが増大している
新しい配送方法の確立が求められている状況であり、人の労力の限界が見え始めていると想定されます。また、システムの実装を念頭においた住宅作りを推進している企業もあるため、今後業界全体の環境の変化が必要な状況になっているといえるでしょう。
住宅における課題
住宅における配送の課題には次のようなものがあります。ライフスタイルの変化や多様的な働き方が認められてはいるものの、単純に荷物を受け取る・購入するだけでも次のような問題はよく発生する事態となっている点は知っておきましょう。
- 立地として郊外である場合、買い物しづらい
- 時間を合わせて受け取る必要がある
- 夜間に受け取り出来ない
住宅地における配送の課題は、空中配送ロボットやドローンによる新しい配達方法によって解決できる可能性を秘めています。また、航空法の把握や物流の新しい方法として認識を業界に広げる、地方自治体を含めて新しい配送方法の実践に取り組むなどの方法も必要です。
空中配送の3つのメリット
ここからは空中配送における3つのメリットについて、みていきましょう。特にワイヤーを使用した空中ロボットであれば、衝突の心配がなく、事前に指定した場所への配送であれば、スムーズに配送することが可能です。そのため、住宅業界においても空中配送を前提とした家づくりに取り組む企業も増えていく可能性が高いと想定されます。
ドローンと比較して衝突・落下しにくい
ワイヤーを使用した空中ロボットであればドローンと比較して、空中で衝突したり、何らかの原因で落下するといったトラブルを防ぐことが可能です。仮に、割れ物や時間指定の配達などであってもスムーズに配達できるため、管理においても業務効率化が可能となるといえるでしょう。
夜間の配送ができるほど音が小さい
空中配送ロボットはワイヤーを使用するため、音が小さく、日中に限らず荷物の配達が可能となります。日中に自宅におらず、荷物の受け取りに苦労している場合や自営業で生活を行っている人々の手間を削減できる点はメリットです。
郊外住宅地でも生活しやすくなる
郊外の住宅地では、道路が整備されておらず、アップ・ダウンが激しいケースも少なくありません。そのため、食料品や日常品の購入をECサイトのみで行っているというケースも想定されます。
仮に、そういった地域で空中配送を可能にするシステムや受け入れる住宅の開発が進んだ場合、地域住民が住みやすくなる点はメリットだといえます。また、ニーズが高くなれば、コミュニティの形成や地域活性化にもつながっていくため、住宅業界にとって新しい配送方法の確立はプラスとなると判断されます。
これまでの空中配送の事例
ここでは、これまでの空中配送の事例についてみていきましょう。
1.埼玉県秩父市
埼玉県秩父市においては、山間部でドローンの活用を行った事例があります。災害によって、インフラが寸断されるリスクが高く、荷物を配送するとしても時折大渋滞が起きることから、車による配送では非常にコストが高くなっていました。
既存の配送方法を活用しつつ、災害発生を想定した配達ではドローンの有効性が認められたことから、車とドローンを活かす方法を前向きに検討するといった結果につながりました。
2.神奈川県川崎市麻生区
神奈川県川崎市麻生区では、パナソニックホールディングス株式会社、東急電鉄株式会社、UR都市機構が連携して、ワイヤーを使用した空中配送配送ロボットによる実証実験を4カ月間行いました。
この実験は、買い物難民への対応だけでなく、物流における人手不足や配送コストの増加に対応する方法の1つとして、配送インフラの確立を目的としたものでした。利用頻度やニーズを把握しつつ、今後も地域拡大を視野にいれて実験を行っていく予定です。
まとめ
ドローン以外の空中配送ロボットを活用した配達は、実証実験が始まった段階であり、日本中の地域で活用するといった流れにはいたっていません。しかし、既存の配達方法に限界があり、今後よりその課題が目にみえてわかりやすく生活に影響を与えていくと想定されます。
そして、空中配送を実践する場合は、住宅業界だけでなく、地方自治体の協力も必要だといえます。そういった点も含めて、住宅業界の配達方法の変化について注目しておきましょう。