住みやすさに直結する。住宅におけるコミュニティ形成とは?

掲載日:

コミュニティ形成をテーマにした住宅や地域は増加しつつあります。そのため、顧客のニーズとして「コミュニティ」を意識した住宅設計が求められるケースも多くなってきました。

本記事では、トレンドワードとしてコミュニティ形成を取り上げ、どういったニーズとメリット、事例があるのかについて解説していきます。

「トレンドワード:コミュニティ形成」

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/community/pdf/070207_1_sa.pdf

住宅におけるコミュニティ形成は、生活の拠点となる戸建てやマンションが地域住民や共通の趣味を持つ人々をつなぐ役割を持つことを目的としています。たとえば、顧客のニーズに合わせて次のような役割を住宅が持っていれば、「コミュニティ形成に注力した住宅設計になっている」と評価されるでしょう。

  • 毎週決まった曜日にケアラーズカフェを開いている
  • 子ども及び子育て世帯が集まり話し合える場がある
  • ボランティア活動やワークショップを開いている

住む人々のライフスタイルの変化によって、地域全体のイベントや憩いの場所としての機能を住宅にも求められるケースが多くなってきているといえます。

持続可能な社会の形成が必要とされている

住宅の中でもマンションにおいては、顧客のニーズとして住む環境の優先順位が高く、事業者としてはコミュニティを形成することでより持続性を高めていくことが大切です。たとえば、住人が中庭を必ず通っていくデザインであれば、次のようなメリットが生まれます。

  • 防犯性が向上する
  • 人々のつながりが強いことから情報を入手しやすくなる
  • 怪我や病気の発作といったアクシデントにも対応しやすくなる 

コミュニティ形成に関しては、東日本大震災以後や近年の災害の多さから注目度が高くなっており、「サービスや商品ではカバーしきれない部分を、人とのつながりによって支援できる」ため、多くの地域や住宅で採用されていると想定されます。

また、周囲の人々のために空間を提供することで、提供者と利用者の普段の生活におけるストレスを軽減させる役割も担っているといえるでしょう。実際に次のように空間を活用している人々も増加しています。

  • 部屋の面積が大きかったことから、リビング・ダイニングを解放し、元保育士の経験を生かして親の育児の相談ができる場所をつくった 
  • キッズルームやラウンジを作り、サークルなどのイベントを開催している

住宅におけるコミュニティ形成の重要性

ここでは、住宅におけるコミュニティ形成の重要性についてみていきましょう。住宅の機能性だけでいえば、近年の住宅性能は向上しています。耐震や免振といった技術だけでなく、エコや断熱性といったエネルギー面にも配慮する必要があるため、システムとして総合的に管理できる仕組みも整いつつあるといえるでしょう。

しかし、地域社会のつながりが薄くなったことから、周囲の人々の変化に気付きにくい環境ができつつあります。そのため、交流ができる場所の1つとして、住宅が選ばれている状況です。

環境面からの暮らしやすさの改善

住環境を整える上での暮らしやすさは、各家族で対応するケースがほとんどです。しかし、住宅をコミュニティを作り、コミュニケーションを図る場として解放できた場合には、住人同士の交流を活性化しやすくなります。

そして、コミュニケーションが活発となってれば、災害などの非常事態時の助け合いや不審者の発見などといった面でもメリットが受けやすくなります。とくに、防犯に関してはAIカメラや監視カメラなどもあるものの、実際にアクシデントが起きた場合の対処は一人ではなく、複数人の方が実施しやすい点は事実だといえるでしょう。 

高齢者及び子育て世帯が住みやすくなる

コミュニティ形成が行われている地域やマンションによっては、一人暮らしの高齢者や子育て世帯が住みやすくなると想定されます。生活に必要な情報が入手しやすくなり、高齢者同士や子育て世代同士の交流といった目的に合わせてサークルやイベントを作ることが可能となるためです。

また、マンション全体の意思統一が必要となる大規模修繕や改修などにおいても実施しやすくなる点もメリットだといえます。

ただし、次のように小規模なマンションから大規模なマンションでは、形成しやすいコミュニティのタイプが違う点を事業者も知っておかなければなりません。

  • 小規模マンション(50戸以下)-部屋の大きさにもよるが地域との連携が必要。マンションを建設する段階で近くに町内会があるかどうか、スペースとして活用できる場所があるかを調べておく必要がある。
  • 中規模マンション(51戸~)-世帯同士での挨拶があるケースが多い。また、集会所や会議室などのスペースがあるため、一人暮らしの高齢者の不安を軽減しやすくなる。
  • 高層マンション-戸数も多いことから、同じ階層の人々とのコミュニケーションは活発になりやすい。また、キッズルーム及びラウンジを設置していれば、住民同士のコミュニケーションをより円滑に推進しやすくなる。
  • 団地-一人暮らしの高齢者同士のコミュニティを形成しやすい。地域ぐるみのコミュニケーションもしやすく、子育て世代もコミュニケーションに苦労しない

住宅におけるコミュニティ形成の事例

ここからは、住宅におけるコミュニティ形成の事例についてみていきましょう。マンションや戸建てといった住環境の違いはあるものの、地域としての取り組みを意識することで

範囲内の住人とコミュニケーションを取りながらお互いを助け合う関係の構築を可能としています。

大阪市

あるマンションでは、ボランティアを前提とした有志が組織を作り、助け合いを行っています。週に1回、屋外テラスを解放し、マンション外の住人ともコミュニケーションを図っているため、周辺の住民の住みやすさにもつながっている状況です。

強制的な参加は呼びかけず、個人のライフスタイルを尊重したコミュニティが形成されているといえるでしょう。また、様々な趣味でつながれるサークルによって、福祉や防災といった課題にも一定の成果を挙げているマンションもあります。 

京都市

下京区では、ある長屋を改修し、連棟長屋として活用しています。路地がシェアスペース・子供の遊び場となっており、子どもの数に応じて賃料が変動する点も含めて、子育て世帯がコミュニケーションを取りやすい場所となっているといえるでしょう。

まとめ

コミュニティ形成を意識した住宅作りは、日本各地で進んでいます。コミュニティ形成を目的とした住宅の改修も珍しいパターンではなくなってきたと判断できるでしょう。地域単位でのコミュニケーションの場として、住宅が1つの選択肢となりつつあります。

今後もコミュニティ形成を意識した住宅作りには一定のニーズがあると想定されます。そのため、住宅業界における「コミュニティ形成」の今後の動向には注目しておきましょう。