防災住宅とは|新しい災害対策を解説
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トレンドワード : 防災住宅
防災住宅は、災害に強い住宅を表す言葉です。戸建て・集合住宅ともに、近年ではより注目を集めるようになりました。本記事では、防災住宅が注目される理由や各都道府県の制度についてみていきましょう。
防災住宅とは
防災住宅は、災害に強い住宅の名称です。地震や火災といった災害を受けたうえで、在宅避難がしやすい設備が整えられています。住宅業界でも各社から販売されており、基礎作りから設計にいたるまで、災害を受けたうえでどれだけ生活や機能を維持できるかに関心が寄せられている状況です。
各災害への対策ができる
日本は地震大国であることから、次のように耐震には明確な基準があります。
基準 | 内容 |
旧耐震基準(1981年より前の基準) | 震度5が基準で倒壊、損傷しないレベルの強度。それ以上には規定がなかった |
新耐震基準(1981年より後の基準) | 震度5程度の地震ではほぼ損傷せず、震度 6から7でも崩壊や倒壊しない。 |
等級に関しても次のように決まっています。耐震の基準を満たしたうえで、必要な等級を満たす必要があるといえるでしょう。
等級 | 内容 |
3級 | 強度として1級の1.5倍まで耐えられる(消防署や警察署、防災住宅などはこの等級が多い) |
2級 | 強度として1級の1.25倍まで耐えられる(長期優良住宅などはこの等級) |
1級 | 数十年に一度レベルの地震に対しては損傷せず、数百年に一度レベルの地震に対しては倒壊や崩壊しない。 |
近年では、局所的に短期間で大量の雨が降りやすい気候が続いています。そのため、住宅の機能として、地震や水害などの各災害に対処できる住宅が顧客から求められる環境に変化しつつある状況です。
防災住宅では、耐震性の確保のため、基礎作りの前に行う基盤から整備をスタートするケースがほとんどです。また、雨水タンク・貯水ユニットや太陽光発電システムなどを備えている住宅も多いため、ライフラインが遮断された場合も数日間は生活を維持できる機能を持っています。
遮音性能が高くランニングコストが安い
防災住宅は鉄筋コンクリート製であれば、耐用年数が47年と決まっていることも含めて外壁や内装などの住宅の維持のために発生するランニングコストが安価です。
また、遮音性能が高い点も特徴の1つです。各社で性能が異なるケースもあるものの、外で騒音が発生していても壁を通すことでマイナス50デシベルほどの効果を発揮するため、静かな空間を保てます。
住宅業界で防災住宅に注目が集まっている理由
ここでは、防災住宅に注目が集まってる理由は主に2つです。
- 災害の増加
- 住生活基本計画法の改正
詳しく内容をみていきましょう。
災害の増加
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/html/n1115000.html
国土交通省の「国土交通白書2020」によれば、日本の災害数は増加傾向にあります。とくに、気候変化による短期集中型の雨が大雨となるケースが多く、土砂災害や洪水による被害は多く発生している状況です。
将来的に発生するとされている南海トラフ巨大地震や首都直下型地震なども含め、より災害に強く、災害を受けた場合でも生活を維持できる住宅のニーズが高まっているといえるでしょう。
2021年の住生活基本計画の改正
2021年に改正された住生活基本計画のポイントは以下のとおりです。
- DXや「新たな日常」など多様的なニーズや災害への対応に対する指針が記載された
- カーボンニュートラルに向けた住宅性能の変化の指針が記載された
建築物省エネ法などもふまえて、住宅地の形成や住宅の改修基準、停電や耐風・耐震などの指針も記載されています。住宅業界としても、定められた基準を守るだけでなく、エネルギーや環境に配慮しつつ、災害に強い住宅を提供していく必要が高まったといえるでしょう。
防災住宅・マンションの認定制度事例
ここでは防災住宅における認定制度の事例についてみていきましょう。とくに、集合住宅で生活している人々は、集合住宅から動けない可能性が高く、ライフラインが寸断された場合の生活維持・継続が大きな課題となっています。そのため、 1つの指針として、認定制度をクリアできる住宅性能が人々からの大切な評価基準となっています。
宮城県仙台市
宮城県仙台市では、集合住宅に向けて「杜の都防災力マンション認定制度」を実施しています。防災性能と防災活動の2つに分けて評価し、最大で6段階で評価される形式です。
防災性能の面では、前提条件として、耐火建築物である点や建築物基準法及び消防法の是正指導を受けていないといった条件をクリアしなければなりません。ガラスの仕様、エレベーターや住戸の扉の開け閉めに関しても詳細な基準を設定しています。
また、防災活動の面では、防災マニュアルの作成や防災組織の結成など、各住民との協力も必要です。防災性能と防災活動どちらも申請から審査を経て、認定となります。
神奈川県横浜市
神奈川県横浜市では、集合住宅に向けて「よこはま防災力向上マンション認定制度」を実施しています。評価基準は次のとおりです。
- 建物はハード、防災活動はソフトに分けて認定している
- ハードでは耐震性や浸水対策などの5つの項目、ソフトでは防災組織やマニュアルなどの4つの項目を全て満たさなければならない
- 建物で地域連携も図れて、ハード+(プラス)認定。防災活動ではソフト+(認定)となる。地域連携に関してはソフトでは3つ、ハードでは4つの項目全てを満たさなければならない
- 全て満たしてれば ハード+(プラス)認定・ソフト+(認定)となる
マンションであれば、新規・賃貸などの形態に関わらず評価する点も特徴といえるでしょう。2年ごとの報告も行う必要があります。
まとめ
防災住宅は、今後も気候の変化や人々のニーズの変化をふまえて住宅業界に提供されていくと想定されます。将来的に予想されている地震や水害などへの対応は、個人だけでなく、住宅から行っていく必要性が高まっているといえるでしょう。
また、ライフラインの維持も含めて、災害を受けたあとでどれだけ生活を維持できるかといったニーズも高まっています。そのため、今後も防災住宅関連の制度や法改正には、注目しておきましょう。