デジタルイノベとは。住宅で考えるべきポイントを解説

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DXを意識した住宅作りとして、スマートホームやIoT機器、AIなどを住宅に取り入れる事例も多くなってきました。そのなかで、住宅業界における「デジタルイノベ」に注目が集まっています。本記事では、デジタルイノベの概要や指針、想定される効果についてみていきましょう。

デジタルイノベとは

デジタルイノベは、デジタルイノベーションの略称で、デジタルの力によって新しい価値を作ることを意味します。そのため、住宅業界でのデジタルイノベは、今までの規定やルール、建築物の性能に対して、デジタルの力で革新を起こすという意味を持ちます。

また、似た言葉として、デジタルリノベという概念もあります。デジタルリノベの場合は、通常のリノベーションの作り変えるという要素に、AIをはじめとするデジタルの要素を含むものです。たとえば、出入口全てをスマートロックに変える、IoT機器による音声操作や異常検知などはデジタルリノベに該当します。

そのため、住宅業界におけるデジタルイノベには、デジタルリノベの要素が含まれているといえます。

住宅業界におけるデジタルイノベの指針

住宅業界におけるデジタルイノベの指針は、住生活基本計画の内容に沿ったものとなる点は知っておきましょう。たとえば、3つの視点の内、「社会環境の変化」に含まれるDXの推進には、取引・契約プロセスや住宅価格の透明化などが含まれています。

加えて、目標2では災害に対する住宅性能の確保、生活と資産価値の維持が含まれています。性能として地震に対応したうえで、停電や断水といったライフラインが絶たれた状態での生活維持の指針も記述されているため、住宅に求められる性能も変わりつつあるといえるでしょう。

契約、取引のDX推進

2022年には、住宅の電子契約が可能になり、顧客体験の向上が可能です。デジタルを通して契約を行うことによって、業務効率化や顧客データの取得から新しいサービスの検討につなげることができます。 契約書保存の手間も省けるため、スピード感のある対応が可能となります。

今後、業界として強くデジタルイノベを意識した場合、電子契約がより普及していく可能性が高いといえるでしょう。

住宅の取引価格の透明化

これまでの住宅価格に関しては、透明性が高いとは言えないものでした。たとえば、住宅の性能が政府資料でも項目として挙げられているものの、顧客からは耐震性・築年数・設備・立地などから総合的に価格を判断することが難しいためです。

そのため、新築・賃貸に関わらず価格の透明性は低かったといえます。しかし、現在では、人々のニーズに合わせるため、過去の取引価格や売買成立価格を公表しているケースも増加しています。政府でも不動産に対するID導入の実証実験を行っている状況です。

今後住生活基本計画の内容をふまえて、より価格の透明化が進んで行くことが想定されます。

AIによる診断・評価・支援

AIによる住宅の診断や評価支援に関しては、サービスとして展開している企業が増加しています。たとえば、外壁・耐震性・対象箇所の劣化診断などは既に導入できる環境が整っているといえるでしょう。 

とくに資産価値を保つ視点から、各施工箇所の担当者がそれぞれの家庭のニーズに合わせて提案を行うといった動きがより迅速になると想定されます。 

デジタルリノベによって想定される効果

https://www.flat35.com/business/standard/energy_zeh.html

ここからは、デジタルリノベによって想定される効果についてみていきましょう。住宅性能として、環境負荷の低減や品質向上を達成しつつ、以下のようなニーズを満たせるようになります。

  • IoT機器やセンサーを駆使して、居住者のデータを収集し温度差を教えたり、シンクの流水量を調整する(健康リスク管理と環境負荷軽減)
  • 建築物そのものにセンサーや異常検知機能を持たせる(迅速な建物判定と防犯性の向上)
  • データを活用したリフォーム・リノベーションの実行(施工者の負担軽減)

今後、政府が義務化予定の建築物の省エネ性能をZEH水準に引き上げる点もふまえてデジタルリノベを促進していくことが大切です。ZEH水準とは次のようなものです。

  • 断熱性等級5(外皮平均熱貫流率:UA値0.4から0.6の間)
  • 一次エネルギー消費量等級6(BEI0.8以下)

ZEHは太陽光エネルギーを含めて、第一次エネルギーを0以下にすることが条件となるため、混同しないように注意しましょう。

防犯性の向上

デジタルリノベによるスマートロックや音を感知するセンサーなどの導入によって防犯性を高めることが可能です。たとえば、出入口だけでもスマホが必須となる場合や暗証番号を使用する場合は、キーを使用する場合と比べて防犯性が高まります。

また、データを根拠としたAIによる人物判断では、犯罪被害の防止・予知にも役立てられます。

空き家対策

2023年時点で日本国内の空き家は約849万戸となっており、社会課題の1つとなっています。そのうえで、空き家対策にはデジタルリノベが効果的です。

仮に、地域内の空き家をデータで確認し、ニーズに合わせてマッチングできれば空き家対策につなげられるでしょう。行政との連携もできれば、移住だけでなく、他の用途での活用方法も見つけやすくなります。

住宅購入のミスマッチ減少

住宅の購入では、多くの人々が「ミスマッチ」を気にしています。とくに、収納の有無や 価格・取得費用などは課題となることが多く、実際に内覧を行わなければ解決できないケースも少なくありません。

しかし、新築や既存の集合住宅であってもVR内覧や3Dシミュレーションを取り入れた場合、ミスマッチを軽減できます。加えて、データで具体的な購入希望者の不安点にも答えることが可能となるため、現地まで行く必要性が低くなるといえるでしょう。

まとめ

デジタルリノベを意識した住宅作りは、業界内でも進んでいます。そのうえで、顧客のニーズが細分化していることから、様々な要望に対して、人力ではなくデータで答える対応が今後より必要となっていく可能性が高いといえます。

現状では、デジタルを意識した住宅作りを意識していない場合でも、建築物省エネ法などの法律の影響によって適切なデータによる判断が求められるケースも増加すると想定されます。そのため、現状のデジタルの活用方法を把握し、取り組めるところから取り組んでいくことが大切です。