建築物省エネ法とは|主な改正点や注意点を解説

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2018年に施行された建築物省エネ法は、建築物の省エネ性能の向上を図ることを目的とした法律です。本記事では、建築物省エネ法の主な変更点や注意すべき点についてみていきましょう。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_tk4_000103.html

建築物省エネ法とは


建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)とは、住宅をはじめとした建築物の省エネ性能向上を目的とした法律です。

2018年に施行され改正を繰り返している

2018年に施工された建築物省エネ法は改正を繰り返しています。2023年6月には、住宅や建築物の省エネ対策をさらに強化するため、建築物省エネ法の一部を改正した「改正建築物省エネ法」が公布され、2024年4月・2025年5月にも大きく改正される予定です。

カーボンニュートラルと温室効果ガス削減が目的

政府は2025年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指しており、2030年度温室効果ガス46%(2013年度比)排出削減を目標に掲げています。

建築物分野は、日本のエネルギー消費量の約3割、日本の木材需要の約4割を占めており、目標達成のためには建築分野における早急な取組が欠かせません。

建築物省エネ法による大きな変更点

2024年・2025年の「建築物省エネ法」の大きな変更点は次の3つです。

  • 省エネ基準の適合義務化
  • 適合性審査の変更
  • 省エネ性能の表示

それぞれについて、みていきましょう。

省エネ基準の適合義務化

原則として、2025年4月以降に着工する全ての新築住宅・非住宅に対し省エネ基準の適合が義務付けられます。なお、増改築を行う際も増改築する部分は、省エネ基準の適合義務が生じる点は知っておきましょう。

住宅の省エネ評価には次の2つの基準があります。

  • 外皮性能基準
  • 一次エネルギー消費量基準

まず、外皮性能評価は屋根・外壁・窓などの断熱性能を評価する基準です。「UA値(外皮平均熱貫流率)」と「ηAC値(日射熱取得率)」の2つの指標を用います。

品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)において、断熱性は「断熱等級(断熱等性能等級)」で表します。以前は等級1(無断熱)~等級4まででしたが、2022年4月に等級5、2022年10月に等級6・7が設けられました。なお、2025年4月以降は全ての新築住宅が等級4以上の基準を満たさなければなりません。

次に、「一次エネルギー消費量」は住宅で使用される設備機器のエネルギーを熱量として換算したものです。省エネルギー基準となる「基準一次エネルギー消費量」が定められています。なお、基準値は、床面積や地域、設備機器などで異なります。

また、該当物件の「一次エネルギー消費量」は、設備機器で消費するエネルギーから、太陽光発電などによって生産するエネルギーを差し引いて算出します。これが「設計一次エネルギー消費量」です。

「設計一次エネルギー消費量」÷「基準一次エネルギー消費量」で求めた数値をBEIと表し、双方のエネルギー量が等しい場合のBEIは1.0です。つまり、BEIが1.0以下であれば、省エネ基準を満たしたことになります。一次エネルギー消費量にも等級があり、「BEI≦1」の状態を等級4と定めたうえで、2025年4月以降、施工業者はこの基準を守らなければなりません。

適合性審査の変更

施行後は、省エネ基準への適合性審査は建築確認手続きの中で実施されることになります。建築主は「省エネ性能確保計画」を所轄行政庁または登録省エネ判定機関に提出し、省エネ適判を受けた後、「適合判定通知書」を提出する流れになるでしょう。

そのため、省エネ基準対象件数の大幅な増加による負担の増加が見込まれています。ただし、負担軽減のため、仕様基準などを利用し、審査が比較的容易な建築物に対する手続きは簡略化される予定です。

省エネ性能の表示

2024年4月以降、事業者が新築建築物の販売や賃貸の広告などに、省エネ性能を分かりやすく示す「省エネ性能ラベル」の表示が努力義務となる点も知っておきましょう。

内容
対象2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築建築物及びその物件を販売・賃貸する際(再販売・再賃貸時を含む)
発行物の種類省エネ性能ラベル:ラベル画像エネルギー消費性能の評価書:証明書
評価方法自己評価:販売・賃貸事業者自ら指定WEBプログラムや仕様基準に沿って評価する第三者評価(BELSマーク):第三者の評価機関に依頼する

2024年3月以前に建築確認申請した物件を、2024年4月以降に販売・賃貸する際の表示は任意です。省エネ性能ラベルにはエネルギー消費性能を星印、断熱性能を数値で表示します。

住宅・非住宅・複合建築物といった「建物の種類」、自己または第三者による「評価方法」、ソーラーパネルなどの「再生可能エネルギー設備の有無」でラベルの種類が異なるため、把握が必要です。

建築物省エネ法での注意点


ここでは、建築物省エネ法改正時に、特に留意すべき3点をみていきましょう。

優良誤認表示

実際のものよりも「優れている」と一般消費者に誤解を抱かせる表示を「優良誤認表示」と呼びます。省エネ性能ラベルを表示する際は、次のような状況を検討したうえで誤解を招く不当表示を避けましょう。

  • マンション全体と各部屋、省エネ性能に違いある場合や部屋ごとに性能が異なっている
  • 代表住戸1部屋分のラベルしか表示できない

とくに限られた住戸のみがラベル表示となっている場合は、「特定の住戸の性能を示すものであり、全ての住戸の性能を示すものではありません」などの但し書きが必要です。

仕様変更による表示変更

リフォームやリノベーションなどの変更によって、表示と実際の省エネ性能に差異が発生するケースもあるでしょう。当初の予定と比べ性能が低下した場合は、変更後の仕様に基づいたラベル修正が必要です。

また、事業者と購入者が双方合意の上で仕様変更するケースも想定されます。仕様変更によって、省エネ性能に影響を与える可能性が生じた場合、購入者に対しその旨を伝えることが望ましく、実際に省エネ性能が低下した際は、ラベルを再発行して購入者と連携を図りましょう。購入者が物件の再販や再賃貸を行う際に、正しいラベルが必要となるためです。

再販売・賃貸時に必要な確認の実施

新築時に取得したラベルは、再販時や再賃貸時に必ず使用できるとは限らない点も知っておきましょう。以下のような場合は、新築時のラベルが使用できます。

  • ラベル発行時以降に仕様変更されていない
  • リフォームや設備の交換・修理などをした際に、元の仕様と同等以上の変更であると確認できる

一方、仕様変更が同等以上であると確認できない場合は、新築時のラベルは使用できません。そのため、再販売や賃貸の際は、仕様変更の有無の確認が必要です。

まとめ

建築物省エネ法では、2024年・2025年と大幅な改正が予定されます。特に大きい点は、2024年4月からの「省エネ性能ラベル表示の努力義務」、2025年4月からのほぼ全ての住宅に対する「省エネ基準の適合義務化」です。

また、適合義務化に伴い、適合審査制度が導入されます。スムーズに対応できるよう、早めに準備を整えておきましょう。