住宅トップランナー制度をわかりやすく解説|国交省の基準や改正ポイント
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「住宅トップランナー制度」についてピックアップします。住宅事業者の供給する分譲戸建住宅・注文戸建住宅・賃貸アパートの省エネ性能向上を促すことで、一層の省エネ性能の向上を誘導します。本記事では制度の概要や、2027年度に向けた見直しのポイントについてご紹介します。
住宅トップランナー制度とは|わかりやすく解説
ここでは、住宅トップランナー制度の概要や対象事業者等について詳しくご紹介していきます。
住宅トップランナー制度の概要
住宅トップランナー制度とは、建築物のエネルギー効率の向上を目的として2017年から導入された制度です。具体的には、住宅の省エネ性能を一定の基準以上に引き上げることを目指しています。
この制度は主に不動産開発業者や建築会社を対象としており、住宅が一定のエネルギー効率基準を満たすよう求められます。新築住宅や大規模な改修を行う事業者は、制度の基準に従う必要があるのです。
住宅トップランナー制度を遵守することで省エネルギー性能が高い住宅を提供でき、消費者にとって魅力的な選択肢となります。また基準を満たした事業者には、さまざまな補助金や税制優遇措置が提供されることもあります。
住宅トップランナー制度の目的
住宅トップランナー制度では、住宅のエネルギー効率を高めることで家庭でのエネルギー消費を削減し、エネルギー資源をより効率的に利用することを促進します。また家庭部門からの温室効果ガスの排出を削減することは、気候変動対策にもつながります。
そして高いエネルギー効率を持つ住宅を普及させることにより、持続可能な社会を実現して将来のエネルギー需要を抑制するのも大きな目的です。省エネルギー性能の高い住宅を増やすことで、住民のエネルギー費用を抑えて家計負担の軽減も図ります。
住宅トップランナー制度の対象事業者
住宅トップランナー制度は、下記の基準を満たす事業者が対象となります。具体的には令和5年4月1日から令和6年3月31日までに「確認済証が交付された」全ての建売戸建住宅、注文戸建住宅、賃貸アパート、分譲マンションが対象です。
事業者 | 規模 |
建売戸建住宅 | 報告対象となる住宅が150戸以上 |
注文戸建住宅 | 報告対象となる住宅が300戸以上 |
賃貸アパート | 報告対象となる住宅が1000戸以上 |
分譲マンション | 報告対象となる住宅が1000戸以上 |
住宅トップランナー制度の目標年度
事業者 | 目標年度 |
建売戸建住宅 | 2020年度 |
注文戸建住宅 | 2024年度 |
賃貸アパート | 2024年度 |
分譲マンション | 2026年度 |
住宅トップランナー制度では、それぞれの事業者ごとに上表の目標年度が定められています。達成目標年度にバラつきがあるのは、開始年度が異なっていることが理由です。
目標年度が2020年度となっている「建売戸建住宅」については、2020年以降の実績が現行基準未達成である事業者に対して書面報告が義務付けられています。具体的には建築物省エネ法に基づき、目標を達成できなかった理由や今後の目標達成に向けた改善計画等が含まれます。
そして「建売戸建住宅・注文戸建住宅・賃貸アパート」は目標年度を迎えているため、現状基準への達成状況等を踏まえて新たに目標年度と水準が設定される予定です。
住宅トップランナー制度のメリット
ここでは、住宅トップランナー制度のメリットについてご紹介します。
室内外の温度差が少なくなる
高い省エネ基準に基づいて設計された住宅は断熱性能が優れているため、外部からの気温の影響を受けにくくなります。これにより、冬は室内の暖かさを保ち、夏は涼しさを維持できるのがメリットです。室内外の温度差が少なくなることで、快適な居住環境を維持できます。
省エネにつながる
住宅トップランナー制度に適合する住宅はエネルギー効率が高く設計されており、少ないエネルギーで快適な室温を保てます。これにより暖房や冷房にかかるエネルギー使用量が抑えられ、エネルギーコストの削減や環境負荷の低減につながるのがメリットです。
カビ予防になる
断熱性や気密性の高い住宅は結露の発生を抑えられ、湿気によるカビの発生を防止できます。これにより住環境の健康を保ち、建材の劣化を防げるのがメリットです。カビの防止はアレルギーや健康被害のリスクも低減するため、健康面にも大いに役立ちます。
住宅トップランナー制度の見直し|2027年度太陽光発電の拡充
国土交通省と経済産業省は、住宅トップランナー基準の見直しを行っています。現行の目標年度が2024年度となっていることから、新たな目標を定める必要があるのです。
具体的には2027年度に向けて、再生可能エネルギーの拡大等が検討されています。建売戸建及び注文戸建に係る住宅トップランナー基準として「太陽光発電設備の設置」に係る目標が設定されます。
ペロブスカイト太陽電池等の次世代型太陽電池の早期社会実装による壁面や、耐荷重性の低い屋根への設置促進も盛り込まれることが予想されます。
まとめ
住宅トップランナー制度を実施することで、省エネ性能の向上に係るコストの縮減・技術力の向上が期待できます。2027年度に向けた見直しによって、中小事業者が供給する住宅も含めた省エネ性能の底上げが図られる予定です。