認定低炭素住宅とZEHの違いとは?認定までの流れや注意点を解説
環境に配慮した住宅は増加傾向です。省エネ基準法の施行だけでなく、カーボンニュートラルを実現するために、環境配慮型の住宅が必須となりつつあるためです。そして、環境配慮型の住宅の1つに認定低炭素住宅があります。
本記事では、認定低炭素住宅の概要やZEHとの違い、認定までのフローについて詳しくみていきましょう。
目次
「トレンドワード:認定低炭素住宅」
認定低炭素住宅とは、市街化区域のみに建設できるCO2排出量を設計や設備によって削減している住宅を意味する言葉です。住宅の利用者へのメリットは、断熱性能やエネルギーカットの工夫が行われているため、快適な住環境の提供が可能な点です。
企業として手掛けるメリットは、地方自治体が定めた基準をクリアしていることから、環境に配慮した住宅作りができる企業として評価される点です。たとえば、次のような基準を設けています。
- 一次消費エネルギー量が省エネ基準と比較して20%以上削減する
- 太陽光発電システムなど再生可能エネルギー利用接尾が設置されている。また、省エネと再エネの合計によって一次エネルギーが50%以上となる
- 資金計画の提出
書類の提出に関しては、設計内容説明書や各種図面なども添付する必要があります。
認定低炭素住宅とZEHの違い
ここでは、認定低炭素住宅とZEHの違いについてみていきましょう。要件としては、ZEHの方が厳しく受けられる補助金の数も多いといえます。
基準の違い
認定低炭素住宅とZEHの代表的な基準の違いは以下のとおりです。
認定低炭素住宅 | ZEH | |
外皮性能 | 0.4から0.6W/(㎡・K) | 0.4から0.6W/(㎡・K) |
基準一次消費エネルギー削減率 | 最低20% | 最低20% |
再生可能エネルギー導入 | 必須 | 必須 |
創エネの合計 | 50%以上 | 100%以上 |
基準の内容は似ているものの、認定低炭素住宅に関しては、創エネの合計値がZEHよりも低い基準となっているといえます。加えて、選択的項目では、HEMS又はBEMSの設置や木造住宅での施工、V2H充放電設備の設置などの要件を満たす必要があります。
選択的項目について、詳しくはこちらを参照。「低炭素化に係る選択的項目について」
基準の内容からすると、認定低炭素住宅とZEHはどちらも、施工前から書類や使用する設備、求められる仕様がある程度決まっています。そのうえで、ZEHの場合は、エネルギー収支をゼロにする必要があるため、より厳しい基準をクリアしなければならないといえるでしょう。
補助金
認定低炭素住宅とZEHで受けられる補助金の代表的なものは、以下になります。
-認定低炭素住宅
- 認定低炭素住宅に対する税の特例(最大控除額409.5万円)
- 給湯省エネ2024事業(機器によって5万円から18万円)
-ZEH
- 子育てエコホーム支援事業(1戸100万円)
- ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業(1戸55万)
- LCCM住宅整備推進事業(1戸140万円)
- 給湯省エネ2024事業(機器によって5万円から18万円)
地方自治体によっては、自治体独自の補助金事業を行っているケースも多いため、チェックしておきましょう。たとえば、東京都が行っている「東京ゼロエミ住宅」では、最大で240万円の助成金を活用できます。
認定低炭素住宅の認定フロー
ここでは、認定炭素住宅の認定フローについてみていきましょう。申請の段階から認定申請書や添付図書が必須となる点や審査内容によっては認定されない可能性もある点を考慮しなければなりません。
1.認定申請の提出
住宅の計画段階で所管行政庁に申請を行います。申請には、設計図書やエネルギー効率計算書などの必要書類が含まれているため、基準を満たすかどうかを示さなければなりません。また、誤りがあった場合は訂正が必要となるため入念な準備が必要です。
2. 認定の審査と交付
申請・書類が受理されると、行政庁が技術基準や性能評価基準をもとに審査を行います。審査に合格した場合には、認定書が交付され、変更があった場合には再度申請から審査が必要となる点も知っておきましょう。
審査に関しては、エネルギー使用の効率性が法律に定められた基準を超えているかどうか、定量的評価の要件を満たしているかどうか、計画内容や資金計画などを総合的に判断することになります。
書類審査の段階で、外皮性能や説明書が認定基準に合っているかどうかまで判断するため、事業者はある程度専門的な知識も必要です。
3. 竣工後の報告と検査
建設が完了した後は、竣工報告を提出し、必要に応じて現地調査や完了検査が行われます。認定条件に沿っていることが確認された場合は、認定低炭素住宅として登録されます。
認定低炭素住宅の注意点
ここでは、認定低炭素住宅の注意点についてみていきましょう。とくに適合基準は、法律で定められていることに加え、地方自治体が設定している数値も満たす必要があります。
設計段階での基準適合の確認が重要
認定低炭素住宅は、書類や設計段階で審査があり、第三者視点から省エネルギー性能やCO₂排出削減基準を満たさなければなりません。 たとえば、設計時点で以下の項目に適合するかどうかをチェックしましょう。
- 断熱性能の確保(UA値):地域ごとに異なる断熱性能基準をクリアし、設計面では窓の配置や構造の工夫が必要
- 設備のエネルギー効率:高効率な給湯器(エコキュート)やLED照明、エアコンが必須。エネルギーマネジメントシステムを使用した効率的な管理で何がどう変化するのかを示す
- 再生可能なエネルギーの利用:太陽光発電や蓄電池の設置を計画に組み込む。創エネ量を具体的に示す必要がある
仮に、設計段階で要件を満たさない場合には、計画の大規模な修正が必要となり、コストの増加や工期の遅延が予想されます。そのため、設計者と施工業者のコミュニケーションや情報共有が重要です。
認定後の維持管理が必須となる
認定低炭素住宅の性能を維持するためには、竣工後の適切な維持管理が必須です。次の項目を定期的にチェックしましょう。
- 断熱材の劣化:断熱材は経年劣化するため、隙間が発生しないように定期的なメンテナンスを行う。場合によっては張り替えも必要
- 空調設備のメンテナンス:エアコンや換気設備が適切に動作しているかを定期的に点検し、必要であれば部品交換を行う。フィルターの汚れや冷媒ガスの不足は、空調効率を大幅に下げる原因になる
- HEMSの状態チェック:低炭素住宅では仕様する機会が多くなるHEMSの管理が必須。たとえば、日常で使用するHEMSが正常に機能しているかは、居住者が確認するしかない。そのため、事業者はどのくらいの頻度で確認が必要なのかといったポイントや異常があった場合の対処方法を教えるといった対処も行う
維持管理によって、エネルギー効率化や光熱費の削減につながるといえるでしょう。
まとめ
認定低炭素住宅は、市街化地域でのみ建設できる、CO2削減を実現する住宅です。ZEHと比較すると基準が緩和されているものの、設計や設備に関しては施工前から準備が必要です。
企業にとっては環境配慮型の取り組みとして評価される点がメリットです。ZEHとの違いを把握しながら、今後どうなっていくのか注目しておきましょう。