ZEHとは。導入する意義と事業者が知っておくべきポイントを解説

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住宅業界においても、環境を考慮した家づくりに注目が集まっています。カーボンニュートラルを実現させるためには、人々の生活におけるエネルギー消費まで考慮しなければ達成できないためです。

また、ZEHに関しては、各社がZEH基準以上を目指す住宅作りをスタートしているだけでなく、官公庁も推進している状況です。しかし、ZEHとZEBの違いがわからない、事業者として注意しなければならないポイントが把握しきれてないというケースもあるでしょう。

本記事では、ZEHとZEBの概要、導入する際に注意したいポイントなどについて解説していきます。

「トレンドワード:ZEH」

ZEH(Net Zero Energy House)は、創り出す一次エネルギーと消費する一次エネルギーの比率を年間でゼロにするための住宅を意味します。また、官公庁で決められた基準があるため、次のように規定された数値は必ず満たす必要があることは知っておきましょう。

  • 断熱性能-内外で発生する熱の移動を遮断する性能を示す。室内温度が保ちやすくなり、空調機器の使用コストも一年を通して小さくなる。断熱性能はUA値(外皮平均熱貫流率)」で表され、ZEHではUA値を0.4〜0.6W/㎡K以下にする必要がある。例えば、0.28となっていた場合は、基準をクリアしていると判断できる。数字が小さいほど性能が高い。
  • 省エネ性能-一次エネルギーの消費量を20%カットすることが基準となっている。冷暖房や換気、照明などが評価対象。値はBEIで示され、設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量で算出可能。例えば、0.8であれば基準は満たしており、より低い数値であるほど性能は高いといえる。
  • 創エネ性能-太陽光発電や蓄電池などエネルギーを作り出す能力を示す。

ZEBとの違い

ZEHとZEBの違いは、簡単にいえば建物の規模や種類です。ZEBは、ビルや学校、大規模な施設などに適用され、ZEHは住宅に適用される概念だといえます。共通点は次のようになります。

  • 省エネと創エネを組み合わせ一次エネルギー消費量をゼロにする
  • それぞれに複数の種類がある
  • 補助金が使用できる

補助金に関しては、どちらも使えるものと片方にしか使用できないものがある点は知っておきましょう。

ZEHの種類

ZEHの種類は、以下のように全部で5種類に分けられます。

項目内容
ZEH+ZEHの基準をクリアしたうえで、更に以下3つの条件をクリアする。
1.HEMSがある
2.太陽光発電のエネルギーを自家用車に使用している
3.断熱性能0.3〜0.5W/㎡K
ZEH1.一次消費エネルギー削減率100%以上
2.一次エネルギー消費量20%削減
3.UA値0.4〜0.6W/㎡K以下
ZEH Oriented1.創エネは不要
2.一次エネルギー消費量20%削減
(土地が十分に広くない都市部などで適用)
Nearly ZEH +1.一次消費エネルギー削減率75%以上から100%未満
2.一次エネルギー消費量25%削減
また、上記条件の他に断熱性能の向上、エネルギーマネジメント、自家消費の拡大のうち2つを満たす
Nearly ZEH1.一次消費エネルギー削減率75%以上から100%未満
2.一次エネルギー消費量20%削減
3.3.UA値0.4〜0.6W/㎡K以下

ZEHの普及率

ZEHの普及率は、2022年の段階でハウスメーカーでは69%となっています。ただし、市場規模で考えると、ハウスメーカーのシェア率は25%程度、2023年の新設住宅着工戸数は81万9,623戸であるため、普及率は高くないといえるでしょう。

環境庁のZEHフォローアップ委員会が公表している「ZEHの普及促進に向けた今後の検討の方向性について」から、今後ZEH+の要件が変化することも想定されます。大手メーカーだけでなく、地方自治体単位でZEHを推進していく取り組みも必要だと予想されます。

ZEHを導入するメリット

ZEHを導入するメリットは、以下の3つです。

  • 消費エネルギーカットに期待できる
  • 企業の社会的評価の向上が望める
  • 創エネによる災害対策ができる

消費エネルギーのカットは、省エネ性能と創エネ性能によって実現できます。例えば、

高断熱の建材や高効率設備の導入では、住宅のエネルギー効率が大幅に向上し、冷暖房や給湯にかかるエネルギー消費が削減されるでしょう。また、システムによって使用されるエネルギーを可視化できるため、使い過ぎの抑制も可能です。

企業としては、環境配慮を強くアピールできます。ZEHの導入によって、環境意識の高い消費者や取引先からの信頼向上を図れるでしょう。また、企業の社会的責任(CSR)としても評価されます。

各国で環境に対する規制にも、ZEHの導入によって規制強化に対応しやすくなるため、企業のリスクマネジメントにもつながるでしょう。

事業者としてZEHの導入で意識したいポイント

ここでは、事業者としてZEHの導入する際のポイントをみていきましょう。例えば、顧客にZEHに関するメンテナンス費用を解説する場合は、後のトラブルを避けるためにも口頭だけでなく、シミュレーションで細かく計画を建てて説明するといった工夫も必要です。

設備費用が高額となるケースがある

ZEHは、顧客の住みやすさを考慮したうえで、必ず規定の数値をクリアしなければなりません。そのため、初期に発生する設備費用が高額となる可能性があります。換気や冷暖房などに関しても高効率であればあるほど、性能が高いと想定されるため、高額となると予想されます。

そのため、設備の性能や機能なども含めて顧客には十分な説明を行いましょう。

デザインに自由度はない

高断熱及び高気密を満たす必要があるため、デザイン性を確保することが難しいケースがあります。顧客のニーズとして、「開放的な空間がほしい」「吹き抜けを作りたい」といった場合、実現できない可能性があります。

そのため、「省エネ・創エネ性能とデザイン性のどちらを優先したいか?」といった綿密なコミュニケーションが必要となります。

システムの操作・管理が必要となる

ZEHの場合、HEMSが導入されるケースも多いと予想されます。この場合、HEMSを使用する顧客に対して、次のような事項を顧客に解説し、コミュニケーションを図りましょう。

  • 何故必要なのか(エネルギー消費の可視化や効率的なエネルギーの使用のために必要など)
  • どんな操作が必要なのか(1週間に1度など定期的に見る必要があるのか、全く見なくてもいいのかといった頻度や具体的な操作方法)
  • 表示されなくなつた場合どうしたらいいのか(故障・メンテナンスや連絡の方法)

まとめ

ZEHは、設計や高機能設備、創り出すエネルギーによって、消費するエネルギー量を年間でゼロにするための住宅です。高気密や高断熱の実現、エネルギーの可視化など、より環境に配慮した住宅だといえるでしょう。

現在は、ハウスメーカーの間でZEHを適用した商品が定着しつつあります。しかし、住宅業界としては、今後より普及が期待できる住宅の1つだといえます。ZEHの特徴や適用条件を把握し、事業者としていつでも対応できるようにしていきましょう。