空き家問題に改修リノベは有効か?現状を解説

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日本の空き家は増加し続けており、今後もその傾向は続くとみられています。倒壊や景観の悪化など、土地や建物の所有者以外にも悪影響を与える可能性が高く社会問題の一つになっています。

また、住宅会社による空き家の耐震改修がニュースになるほど、積極的な取り組みは少ないという状況です。そのうえで、改修による耐震リノベは空き家問題の解決策として有効なのでしょうか。

本記事では、空き家問題の現状と各自治体の取り組み事例についてみていきましょう。

「空き家 耐震」

空き家の7割は、耐震基準が定まっていなかった物件だとされています。1981年5月31日までに建築確認を行った建物は、震度5強以上の地震に対する定めがありませんでした。つまり、空き家の多くは、1981年5月31日よりも以前に建築されたものが多い状況にあり、強い地震には耐えられない可能性が高いといえます。

そのため、景観維持や地域活性化のため、自治体や住宅・不動産業者によって、耐震改修リノベを実施するケースは増加傾向にあるといえるでしょう。また、リノベによって、そのままでは住みにくい住宅を、地域住民のニーズに応える物件に改修できる点もメリットの1つです。

リノベによる耐震改修によって、資産価値の向上や再利用の選択肢ができ、地域貢献にもつながる点はメリットといえます。現状では、住宅業界よりも不動産業界で取り組まれている事例が多いものの、今後、新規の住宅供給数が下がっていくことが予想されるため、空き家にも注目しておきましょう。

住宅業界が空き家の利活用に注目する理由

住宅業界として、空き家活用に注目する理由は大きく分けて以下の2つです。

  • 新規住宅の供給数はいずれ飽和する
  • リフォーム・リノベのニーズが高まっている(新築よりも安価であるため)

既存の住宅の柱や間取りを利用し、大幅なリノベ改修によって、実現するほうが新規で注文住宅を立てるよりは安価となるケースが多いといえます。また、新規住宅住宅着工数は、現状でも81万9,632戸まで減少しており、2030年には74万戸まで減少すると予想されています。

そのため、空地の確保だけでなく、住宅業界として生き残るためにも、空き家の利活用に注目が集まっているといえるでしょう。

空き家問題とは

日本の住宅のストック数は約6,240万戸となっており、日本の世帯数5,400万世帯をすでにカバーできる状態にあります。しかし、1988年の調査開始時点で576万戸、2018年までには849万戸までに増加している状況にあります。

加えて、長期不在の住宅に関しては、349万戸まで増加しており、空き家率が10%を超えている自治体も多くなってきました。空き家を放置することによって次のような問題が発生することも知っておきましょう。

  • 景観の悪化
  • 倒壊や火災のリスク
  • 治安の悪化

空き家の解体費用は、高額であれば200万円以上かかることもあります。しかし、解体よりもリノベ費用の方が安価であるため、リノベ―ションが選択されるケースも増加傾向にあるといえます。

また、物置や買い手・借り手が少ないために放置しているケースも多く、住宅のみの改修だけでは問題は解決できないケースの方が多い点も知っておきましょう。そのため、移り住んだ人々が円滑に地域になじめるような地方自治体の施策やサポートも必要です。

自治体の空き家対策事例

ここでは、効果的な空き家対策の事例をみていきます。全国の自治体では、増加する空き家に対処するため、様々な対策を実施しています。空き家の有効活用や解体によって、地域の安全性や景観を改善する取り組みが進められているといえるでしょう。

茨城県水戸市

茨城県水戸市では、中心市街地の空き家や空き店舗が増加しており、その状況を産官学一体で把握するという取り組みが行われました。地域活性のため、空き店舗の利活用の実践、ランチマップや調査マップの作成、空き家相談まで実施しています。

東京都八王子市

東京都八王子市では、郊外の戸建住宅地を対象にしてNPOと自治会が連携を行い、個別ヒヤリングやアンケートを実施し、相談会を実施しました。また、空き家を活用した事業モデルの構築を目的として、パンフレットの作成も実施しています。

令和4年には、空き家の所有者や住まいの悩みを抱える居住者を対象として、相談窓口を作りました。また、どのように住宅を活用するのかといった利活用に関するパンフレットや啓発動画の作成を行い、実際に成果が上がっています。

京都府京都市

京都府京都市では、現在住んでいる住宅の活用方法を事前に相談することを目的に、中古住宅の流通モデルを作成しました。洛西ニュータウンでは、築40年となる住宅が多かったことから、改修設計の相談や賃貸運営の相談、UR都市機構と連携し住み替えのアドバイスの実施も行っています。

また、将来的な介護サービスのスタートまで含めた改修設計まで作成しました。

岡山県瀬戸内市

岡山県瀬戸内市では、次のような条件が比較的難しい建物でも、使い方と運用次第で移住者を迎え入れることに成功しています。

  • 木造2階建て
  • 1階は10畳、2階は6畳
  • 借り手が納屋を解体する
  • 一定期間は家賃が無料になる

別の物件を求める居住者に、上記のような条件が難しい物件を貸し出すことで、スムーズな移住の実現に成功しています。条件が難しい物件があっても、事業者のアドバイスや自治体のサポートがあればうまく活用できるといえるでしょう。

山形県酒田市

山形県酒田市では、相続人がわからない建物に対して市が利害関係者として、裁判所に申し立てを実施しました。その後、市は裁判所の許可を経て、建物を解体し、現在では土地は空地となっています。

また、所有者が遠方に居住している空き家を移住希望者に貸し出す取り組みも実施しています。加えて、内部の不用品の処分・リノベ改修は移住希望者が実施できるため、地域活性につながる取り組みだといえるでしょう。

まとめ

日本の空き家は増加し続けているものの、各自治体や企業によって、対策が講じられています。人口減少や地域活性化につながる施策も実施しており、特に移住者にとってはプラスの影響を与えるものも多いといえるでしょう。

ただし、空き家の改修に対して、住宅業者が参入しているケースは日本ではまだ少ない状況にあります。今後、空き家が増加していくことから、住宅業界としても空き家の活用にも注目しておきましょう。