政府が推進する国民運動「デコカツ」とは?概要から事例まで解説

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住宅業界では、エネルギーやエコをテーマとした住宅の施工が増加しつつあります。2025年には一次エネルギー量や熱の損失量を基準以下とする省エネ適合基準の義務化、2030年までにはZEH水準の適合が義務化となる予定です。

2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指すための取り組みだといえるでしょう。しかし、政府が掲げている目標が具体的であっても、実際の取り組みは進んでいないという状況があります。そういった中で、政府主体で「デコカツ」という取り組みの実施をスタートしています。

本記事では、政府が打ち出している施策の1つである「デコカツ」の概要や住宅業界への影響についてみていきましょう。

「トレンドワード:デコカツ」

https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/

デコカツは、次の言葉を組み合わせた「脱炭素に繋がる新しい豊かな暮らしを守る国民活動」を意味するものです。たとえば、次のような取り組みは、総じてデコカツといえるでしょう。

  • エネルギー変換効率の高い太陽光発電や給湯器を選んで設置する
  • EV車の電気エネルギーを充電できる設備を住宅に設置する
  • 住宅のエネルギー消費量を把握するためのシステムを取り入れる
  • 国産の木材を使用した住宅の建設・販売をスタートする
  • 家電などを提案する場合も住宅の断熱性能に合わせた提案の実施を徹底する

脱炭素のための国民運動

デコカツは脱炭素のための国民運動であり、次のような具体的アクションを組み合わせた言葉となっています。

頭文字具体的なアクション
デ(Decarbonization)電気も省エネ断熱住宅
コ(Eco)こだわる楽しさエコグッズ
カ(活動)感謝の心食べ残しゼロ
ツ(生活)つながるオフィステレワーク

住宅業界が大きく関連するのは、「デ」と「ツ」の部分です。住宅を建設する段階で、断熱性やエネルギー消費量の管理ができるかどうかなどは、仕様として把握できます。また、テレワークを意識した部屋作りなどもデコカツを意識している顧客には、ニーズがあると想定されます。

デコカツを率先して行うことが脱炭素につながるため、顧客のライフスタイルとエネルギーやエコを考慮した提案が今後より必要になってくるといえるでしょう。

地方自治体・企業が実施するデコ活宣言

デコカツ宣言は、地方自治体と企業がデコカツの内容に合わせて、次の2つの指針に取り組んでいくことを示すものです。

  • 脱炭素につながる製品やサービス取り組みを実施する
  • 電気自動車やLED照明高効率設備屋の切り替えの実践

デコカツが住宅業界に及ぼす影響

ここではデコカツが住宅業界に与える影響をみていきましょう。省エネ基準、ZEH水準といった義務だけでなく、国内では木材を使用した住宅作りが見直されています。

また、環境に対して良い影響を与える住宅作りを行っていく企業が今後より評価されていくと想定されます。そのため、企業として社会的評価を保つためにも、エネルギーやエコのトレンドやニーズについて知り、取り入れるところから実践していくことが大切です。

エネルギー、省エネ面の住宅に対する法令整備が進んでいる

令和3年における環境省の「家庭部門のCO2排出実態統計調査」では、2.74トンの排出量があるとされています。そのうえで、次のような住宅性能を左右する法的整備が進んでいます。

  • 2025年ー省エネ適合基準の義務化(省エネ性能の表示推進、断熱性能等級4以上かつ一時エネルギー消費量等級4以上)
  • 2030年-ZEH水準の義務化(断熱等性能等級の等級5級かつエネルギー消費量等級等級)

他にもウッド・チェンジ(身の回り)など、義務ではないものの、環境に配慮した取り組みが日本国内では増加している状況です。今後、カーボンニュートラルの実施に向けてさらに、エネルギーや省エネに対する義務が増加する可能性もある店は知っておきましょう。

エネルギーマネジメントシステムのニーズが高まっている

エネルギーマネジメントシステムは、電気やガスといったエネルギーの使用状況を把握・分析し、総合的なコスト削減につなげるものです。どこに無駄があるのか把握しやすくなり、節約・省エネにつなげやすくなる点がメリットといえます。

暖房や給湯といった設備は家庭の中でもCO2排出量が高く、顧客が「住環境や住宅性能を重視する」といったニーズがある場合も活用できます。エネルギーやエコに対するニーズが今後も高まっていくと予想されるため、現状でどのような機器であれば用意できるのか、住宅性能と合わせてどのような設備が必要なのかを定期的に見直しましょう。

デコを意識した取り組みの事例

ここではデコカツを意識した取り組みの事例についてみていきましょう。自治体が率先して活動を推進することで、顧客や企業にもデコカツが浸透していく可能性が高まります。

千葉県君津市

千葉県君津市では、デコカツとして家庭用省エネ・再エネ設備等の導入支援として、次のような補助金を交付していました。

  • 太陽光発電システム
  • 家庭用燃料電池システム
  • 窓の断熱改修
  • 電気自動車
  • プラグインハイブリッド自動車

また、市としてCO2排出量がどの分野から出ているのかを把握し、気候変動適応計画や第5地球温暖化対策実行計画の策定などに取り組んでいます。

栃木県佐野市

栃木県佐野市では、次のような取り組みを補助金交付によって推進しています。

  • ZEH化支援
  • 省エネ家電購入支援
  • 高断熱窓への改修

現在は受付終了で申請できないものの、市の対策として、温暖化や環境に配慮した住宅作りの支援を行っていることから、佐野市は今後もエコカツを行っていくといえるでしょう。

鹿児島県鹿児島市

鹿児島市は次のような内容を実践する「ゼロカーボンシティ鹿児島」に挑戦しています。

  • 公共施設・市民に対する太陽光の導入支援
  • 廃棄物を利用した創エネ
  • 助成金を活用した電気自動車の普及促進

デコカツも含めて、鹿児島市では今後も環境に配慮した街づくりを推進していくと想定されます。

まとめ

デコカツは政府が示した「脱炭素に繋がる新しい豊かな暮らしを守る国民活動」を意味する言葉です。企業や個人といった範囲に制限はなく、脱炭素を意識した行動であれば、全てデコカツとして捉えられます。

住宅に関しては、エコを意識した住宅性能や設備が今後より求められていくといえます。そのため、現在の事業内容を確認し、今後どのように地域や住宅作りにつなげていくのか、想定しておきましょう。