顔認証システムの仕組みは?|建設業での活用事例も

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Tag:建設DX

著者:小日向

トレンドワード:顔認証システム

顔認証システム」についてピックアップします。AIの進化で認証制度が上がっており、あらゆる場面での活用が見られます。本記事では、顔認証システムの仕組みや建設業での活用事例について具体的にご紹介していきます。

顔認証システムとは|仕組みや使い方

顔認証システムの概要やメリット

顔認証システムは、顔の各部位の位置・大きさのデータで照合する認証方法のことを指します。最近では、建物の入退出やスマホの解錠といったセキュリティに活用されることも多くなっています。なりすましが難しいため認証精度が高く、空港での出入国管理にも使われています。

顔認証システムの主なメリットは、以下の通りです。

  • パスワード不要で利便性に優れる
  • 非接触対応可能
  • 年齢やメイクの変化に対応
  • 操作の負担が少ない

顔認証システムは非接触で行われるため、利用者はカードやパスワードの入力などの物理的な操作をする必要がありません。

またリアルタイムで処理が行われるため、高速な認識が可能です。顔情報の取得から識別までのプロセスが迅速に実行され、手間や時間の節約になります。

さらに他の生体認証手法(指紋、虹彩など)と比較して、利用者の個人情報を隠蔽しやすくなります。また偽造やなりすましに対しても、信頼性が高いのが特徴です。

顔認証システムの仕組み

顔認証システムの大まかな仕組みは、以下のようになっています。

  • ①登録:顔の特徴点やパターンをデータ変換し、データベースに保存。
  • ②識別:カメラやセンサーで顔情報を取得し、登録データと比較。
  • ③認証:一定の閾値以上の類似度があるデータか検証。
  • ④判定:特定のアルゴリズムにより、認証成功か失敗を判定。

最近では「AI(人工知能)」の活用により、顔の識別精度が各段に向上しています。AIは顔画像の特徴抽出や分類において、機械学習アルゴリズムや深層学習モデルを使用して高度な処理を行うことが可能です。顔の特徴点、輪郭、テクスチャなどのパターンを学習し、識別モデルを構築します。

また大量の顔画像データを学習させることで、より高い精度と汎化性能を実現します。AIは学習過程でパラメータの最適化や特徴量の選択を行い、識別性能を常に改善しています。

顔認証でよくある疑問

ここでは、顔認証システムでよくある疑問点について解説していきます。

顔認証はマスクをしていても大丈夫?

新型コロナウイルスの流行時には、マスクをする生活が当たり前になりました。「マスクで顔が覆われていたら認識できないのでは?」と思ってしまいますが、マスク有りでも問題なく顔認証できます。

マスク着用時でも、AIが「目や眉毛の形状、目の間隔、額のライン」など覆われていない部分の特徴を抽出して比較します。あらかじめ「マスクをしている状態の顔データ」を含んだ学習データを使用することで、認識時に適切に対応することができるのです。

ただし、マスクをしていると100%の認識精度の保証が難しい場合があります。高いセキュリティが求められる環境では、他の認証手法や追加の要素を組み合わせることが推奨されるでしょう。

マイナンバーカードも顔認証可能に?

2021年からマイナンバーカードが健康保険証として利用可能になり、2024年には「マイナ保険証一本化」が行われる見通しです。

それに伴い、病院では「顔認証付きカードリーダー」の導入が始まります。専用機械にカードを差し込むと、「顔認証」か「暗証番号」のどちらかで本人確認が行われるという仕組みです。

この際の顔認証は、「マイナンバーカードから抽出した顔写真」と照合されます。小さな子供など、本人が顔認証操作が行えない場合には「親等の代理人がマイナンバーカードをカードリーダーに置き、暗証番号を入力する」という方法も可能です。

建設業での顔認証システム事例

ここでは、建設業で顔認証システムを導入している具体事例をご紹介していきます。主に入退出管理での事例が多く、IT化が進められています。

①大林組|建設現場顔認証forグリーンサイト

大林組は、デジタル化推進の一環としてNECの入退場管理サービス「建設現場顔認証forグリーンサイト」を採用しています。

タブレットやスマホなどの端末を使って、作業員の現場入退場時に顔認証(生体認証)による本人確認を行うシステムです。同時にGPS位置情報を取得することで、「誰が」「いつ」「どこで」入退場を記録したかを正確に把握できます。

この入退場情報は、㈱MCデータプラスが提供する安全書類管理サービス「グリーンサイト」の通門管理システムと連携しており、建設キャリアアップシステム(CCUS)の就業履歴に自動登録されます。

②鹿島建設|入退場管理システム・Buildee

鹿島建設は、現場に入退場する技能労働者の就業履歴を把握できる顔認証入退場管理システムの導入を進めています。すでに全国の150現場への導入を完了しており、技能労働者の登録者数は10万人以上を達成しました。

また施工管理システム「Buildee(ビルディー)」を通じて、国土交通省等が主導する建設キャリアアップシステム(CCUS)と連携しています。検温を行うため、熱赤外線カメラ付きの新システムも導入済みです。

Buildeeに集約された情報は、現場だけでなく本社・支店などの遠隔地からもリアルタイムで把握・管理できます。これにより集計の手間が軽減でき、各現場ごとの生産性分析などが可能となります。

③大東建託|Safie Entrance(セーフィーエントランス)

大東建設は、セーフィー㈱による顔認証システム「Safie Entrance(セーフィーエントランス)」を2019年に全ての建設現場に導入しました。これまで現場担当者が毎日行っていた書類確認業務が不要となり、「どの現場に」「どこの技能労働者が」「いつ入場したか」も確認できます。

事前登録情報に不備がある技能労働者は顔認証で「×判定」となり、現場に入場することができない仕組みです。災害リスクが高いとされる高齢・有疾患の技能労働者に対する注意喚起や、安全指導の強化が可能となっています。これにより1年間で「現場担当者1人あたり252時間の労働時間が削減」され、業務効率化に繋げています。

まとめ|顔認証で業務効率化

顔認証システムはスマホのロック解除や建物エントランスなど、身近な所でも導入が進められています。パスワードを忘れたり鍵を物理的に無くしたりする心配がないので、より安全なセキュリティと言えるでしょう。AIによって認証精度が日々向上しているため、今後さらなる広がりが期待されます。