遠隔操作で建設業効率化|事例や国交省取組まとめ

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著者:小日向

トレンドワード:遠隔操作

「遠隔操作」についてピックアップします。建設機械を遠隔操作することで、安全性の向上や業務効率化が期待されます。本記事では遠隔操作の事例やメリット・デメリットをご紹介していきます。

建設機械の遠隔操作とは

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001617602.pdf

建設機械の遠隔操作とは、建設現場と離れた場所からインターネットを利用して操作する方式のことを指します。コックピットの映像から、まるで現地にいるかのような臨場感で操作できるのが特徴です。現場間の移動が無くなることで、業務効率化に繋がると期待されています。

建設機械の遠隔操作事例

ここでは、建設機械での遠隔操作事例についてご紹介します。大手ゼネコンでは実証が進められており、最新技術が投入されている事例も多いです。

①大林組|東京-大阪間で遠隔操作デモ

大林組は、遠隔操作システムによって東京―大阪間で次世代施工デモを実施しました。自動化+自律化+遠隔操作で、約400㎞の距離を越えてパワーショベルでの土砂積み込みに成功しました。

この取り組みは「e建機チャレンジ2023」の中で行われ、学生・プロゲーマー・重機経験者等による、建機遠隔操作の競技会も併せて実施されました。eSports のようなゲーム感覚でタイムと正確性を競う形式により、新たな働き手の創出に繋げる狙いもあります。

②コマツ|5Gで遠隔操作

コマツは、EARTHBRAINと共同で建設機械向けの遠隔操作システムを開発しました。このシステムは、ラジコン仕様車をベースとしています。遠隔操作の信号をラジコン操作用に変換し、信号を伝えるためのソフトウェアとコントローラーを新規開発して組み合わせる仕組みです。

EARTHBRAINが開発した遠隔操作用コックピットでは、高精細映像により実際の運転席同様に遠隔操作を行えます。遠隔操作に必要な現場の映像や制御信号の送受信には、高速・大容量・低遅延を特長とした5Gを利用しています。

③竹中工務店・鹿島建設|TawaRemo

竹中工務店鹿島建設は、タワークレーン遠隔操作システム「TawaRemo(専用コックピットタイプ)」を共同開発しました。タワークレーンの操作に必要なコックピットは、操作時の臨場感を重視した「専用タイプ」と、軽量で設置が容易な「簡易タイプ」の2つから選択できます。

クレーンの始業前点検等の各種操作をコックピットから行えるため、高所の運転席への昇降が不要になります。そのため、オペレーターの作業環境を大幅に改善できるのがメリットです。

建設業での遠隔操作のメリット

遠隔操作のメリットとしては、下記が挙げられます。

  • 生産性の向上
  • 安全性の確保
  • 人手不足の解消

遠隔操作では、重機のデータを解析しながら作業を行います。これにより熟練作業員しかできなかった作業のデータ化が可能になり、生産性が向上します。

また危険な現場作業も無人化できることで、安全性が確保できます。オフィスにいながら作業できるため働き方が改善され、多様な人材の確保にも繋がるでしょう。

建設業での遠隔操作の課題・デメリット

  • 初期費用が掛かる
  • インターネット環境が必要
  • 人材教育の必要性

遠隔操作には、多数のウェアラブルカメラや専用ツールが必要になります。導入費用が掛かることで、導入に踏み切れない事業者も多いです。

また通信にはインターネットが必要ですが、天候や通信状況によってやり取りが途絶えてしまう可能性があります。業務において音声や映像が鮮明でないと安全性に影響が出るため、通信環境の整備が求められます。さらに遠隔操作は実際の現場作業と異なる点も多いことから、人材教育も必要です。

国交省・「遠隔臨場」を本格実施

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_000881.html

国土交通省では、2022年度から「遠隔臨場」を本格的に実施しています。遠隔臨場とは、公共工事における「段階確認・材料確認・立会」の業務を遠隔地から確認することを指します。

ウェアラブルカメラやスマートフォンなどを使うことで、その場にいなくても現場の確認作業が行えるのです。国土交通省が2020年3月に策定し、公共工事の建設現場において監督・検査作業効率を改善することを目的としています。

遠隔臨場は、2022年に「原則すべての工事に適用」とされました。まだ試行に取り組んでいない受注者向けに「取組事例集」を作成し、受注者が工夫した点や課題など、現場の生の声を掲載しています。こういった取り組みにより、遠隔臨場は急速に普及しています。

まとめ|遠隔操作で業務効率化

建設機械の遠隔操作や遠隔臨場では、現場への移動時間や、立会に伴う受注者の待ち時間の短縮等の効果が認められています。人手不足が問題となっている建設業界では、遠隔による省人化は大きなメリットです。まだまだ導入されている現場は少ないですが、さらなる広がりが期待されます。