大和ハウス工業とトプコンが実証、デジタル施工技術で省力化を実現、墨出し作業が2割効率化

掲載日：2025年11月30日

株式会社トプコン(本社:東京都板橋区、代表取締役社長CEO:江藤隆志)と大和ハウス工業株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:大友浩嗣)は、2025年10月23日に完成した製造拠点の建設プロジェクトにおいて、建築情報モデリング(BIM)とデジタル施工手法を組み合わせた結果、作業の効率化と生産性の大幅な改善を達成したと発表しました。

対象となったのは、トプコンの製造子会社である株式会社トプコン山形の工場施設です。この建設プロジェクトでは、最新のデジタル技術を積極的に導入し、従来の施工方法と比較して顕著な成果を上げることができました。

協業の経緯と実績
デジタルコンストラクションへの本格的な取り組み
- 最新プロジェクトでの技術革新
墨出し作業での顕著な効果
施工段階でのBIM活用事例
- 現場作業員の評価
今後の展開
- 出典情報

協業の経緯と実績

両社の連携は今回が初めてではありません。最初の共同プロジェクトは、2019年12月にスタートした株式会社トプコンオプトネクサス(福島県田村市)の工場建設でした。

このプロジェクトでは、土地の測量作業から基礎部分の施工に至るまで、各段階でBIMを採用しました。さらに、トプコンが開発したデジタル測量機器や情報通信技術を活用した自動化施工システムを取り入れたことで、現場での作業負担が軽減され、生産性が飛躍的に向上しました。

デジタルコンストラクションへの本格的な取り組み

2020年11月、両社はデジタルコンストラクションの実現を目指して「基本合意書」を交わしました。この合意に基づき、それぞれが持つ専門知識を活かした開発が進められました。

トプコンは、鉄骨の建て方作業を支援するスマートフォン向けアプリケーション「楽直」を開発・販売しました。一方、大和ハウス工業では、施工現場における測量作業の負担を減らすレイアウトナビゲーターの使用が広まりました。こうした現場のデジタル化推進により、現在では大和ハウス工業の全国各地の施工現場(賃貸住宅・商業施設・事業施設)において、トプコン製の機器が導入されています。

墨出し作業での顕著な効果

特筆すべき成果として、現場での墨出し作業における生産性の向上があります。BIMから得られるデータとレイアウトナビゲーターを連携させることで、この作業の効率が従来比で20%向上しました。墨出し作業とは、建設現場において設計図面の内容を実際の床面に正確に表示する重要な工程です。

施工段階でのBIM活用事例

トプコン山形の工場建設では、施工フェーズにおけるBIMの実用化に関して、以下のような具体的な検証が行われました。

掘削機械の刃先が動いた軌跡から取得した、地盤掘削の仕上がり状況に関するデータをBIMモデルに組み込み、地面に設置する足場の配置を事前に検討しました。また、建設現場で必要となる複雑な設計図面の情報を床面に再現する墨出し作業について、BIMモデルから自動墨出しロボットへデータを直接取り込むことで実施しました。従来は職人による手作業が必要でしたが、ロボット作業に置き換えることで人員削減を実現しました。

さらに、情報通信技術を搭載した建設機械による掘削作業の状況を、専用ソフトウェアを経由して確認できるようにしました。これにより、場所を問わず遠隔地から施工の進み具合を把握することが可能になりました。3次元スキャナーを使用したコンクリートの平坦性の可視化も行い、施工品質の向上につながりました。

現場作業員の評価

実際に工事を担当した作業員からは、データ活用の将来的な可能性を実感できたという感想や、今後さらにデジタル化のツールや施策を導入していきたいという前向きな意見が寄せられています。また、建設業界の人材不足問題を解決するためにも、デジタル化の導入が必要だと感じたという声もありました。

今後の展開

両社は今後、建物の維持管理段階にもデジタル化を拡大していく方針です。建物のライフサイクル全体を支える新しい標準として、デジタル建設技術を定着させることを目指しています。設計から施工、そして維持管理まで、建物に関わるすべての段階でデジタル技術を活用することで、より効率的で持続可能な建設プロセスの確立を図ります。

出典情報

大和ハウス工業株式会社リリース,BIMとデジタル施工技術でさらなる省力化と生産性向上を実現,https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/house/20251023111428.html