国土交通省では、令和元年より官民一体でBIMを推進する取り組みをスタート。「建築BIM推進会議」を構築し、議論を進めています。ここでは中でも特に注目の「BIMモデル事業」の具体事例を紹介していきます。メリットや課題分析データなど、幅広く応用できる事例が多数!ぜひ参考にしてみてください。

▼他の連載記事はこちら▼
第一回:東京オペラシティ‐分析課題①大規模既存施設のBIM構築手法検討
第二回:東京オペラシティ‐分析課題②管理業務フローへの対応
第三回:東京オペラシティ‐分析課題③テナント区画変更への対応
第四回:東京オペラシティ‐分析課題④クラウド化した不動産管理システムとBIMの連動
第五回:東京オペラシティ‐分析課題⑤資産管理データとBIMの連動
第六回:東京オペラシティ‐分析課題⑥中長期修繕計画策定での共有データ設定
第七回:東京オペラシティ‐分析課題⑦BIM活用による業務量の変化を比較
第八回:東京オペラシティ‐分析課題⑧単年度・中長期維持保全計画策定フローへのBIM導入

「建築BIM推進会議」について詳しくまとめた記事は、こちらをご覧ください。

東京オペラシティビルの維持管理にBIM導入

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 0401-1.png
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/kenchikuBIMsuishinkaigi.html

東京オペラシティビル㈱とプロパティデータバンク㈱によるBIM導入プロジェクトです。クラウド化した不動産管理システムとBIMを導入し、維持管理段階におけるBIMの活用方策について検証を行いました。この取り組みを通して、施設維持管理の高度化・生産性向上・施設全体の長寿命化を図ることを目的としています。

プロジェクト概要

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 0401-2-1.png
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/kenchikuBIMsuishinkaigi.html

プロジェクト区分:維持管理
検証区分:これからBIMを活用
用途:複合施設(事務所、店舗棟)東京オペラシティビル
階数:地上54階、地下4階、塔屋2階
延べ床面積:約242,500㎡
構造種別:SRC

このBIM活用事例の特色

  • BIM情報を持たない既存大型複合施設が対象
  • 生産工程上流から引き継ぐのではなく、竣工後の維持管理を長期に担う者の立場からBIMの必要性を試行する取組である
  • 維持管理者の生産性向上だけでなくオーナーの資産管理業務(会計処理含む)に対しての効率化も念頭にBIMを構築する

上記のポイントから、不動産マーケットの大部分を占める既存ビル(中小含め)のオーナーへの訴求効果が高いと言えるでしょう。

分析する課題:中長期修繕計画策定での共有データ設定

ビル管理における資本的支出は固定資産計上の基礎になるため、各工事の詳細情報が書類で蓄積されているケースがほとんどです。本事業では、書類情報を分析して今後のデータベース構築の基礎情報とすることを目的としています。また発生事由や内容から設備・部位ごとの信頼度や故障率を算定。更新周期の基礎情報としても活用します。

東京オペラシティの各工事では、統括管理会社、オーナー、設計者などが連携して実施可否を検討しています。その際の申請や承認では、書類や図面が中心になっていました。しかし最終的には、工事の予算化、申請、実施、完了、会計システムとの連携など一連のワークフローのシステム化を目指しています。

実施方法

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000142.html

有識者である早稲田大学の参画のもと、ライフサイクルコンサルタントと BIM マネージャーが連係しながら以下の業務を推進しました。

①故障、不具合の発生履歴を、カプランマイヤー法などを適用して分析(信頼度・故障率を算定)する。

②部位、部材ごとに近似するワイブル関数などを活用し最適な更新周期を設定する。

③以上を活用しリスクベースメンテナンスなどの考え方に基づく長期修繕計画を策定する。

結果

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000142.html

一体システムを構築し試運用を実施するとともに、省力化効果などを検証しました。リスクベースメンテナンスなどの考え方に基づく工事ワークフローを構築。ワークフローは管理会社(PM)、オーナーなど関係者が参加できるものとし、長期修繕計画は工事実績や最新の劣化状況などを反映し毎年更新するものとしました。

その結果、長期修繕計画策定から修繕工事の企画・実施・完了から固定資産計上までのワークフローの各段階において、情報集約・作成にかかわる業務量(人・日)の削減が実証できました。例として図面検索や現地調査業務の軽減、劣化予兆把握の迅速化等の効果等が期待できます。

まとめ

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000142.html

資本的支出工事は、長期修繕計画などに基づいて計画あるいは実施されるケースが多いのが特徴です。その際には業界推奨値の更新周期などが参考とされますが、精度を高めるためには管理の状況や施設の特性などを踏まえ、当該施設に対応した調整が必要となります。

今回は既存施設である点を踏まえ、大量の履歴データなどを調査することが可能でした。基礎調査により、故障、不具合の発生履歴を、カプランマイヤー法などを適用して分析し、各設備や部材ごとの信頼度・故障率を算定。部位、部材ごとに近似するワイブル関数などを活用し、ライフサイクルコストなどの観点から最適な更新周期を設定することができました。算出された最新の更新周期に基づく長期修繕計画を策定することができ、今後への活用が期待されます。

【この記事を読んだ方におすすめの記事はこちら】